対談=宇野維正×速水健朗 大衆音楽家、小沢健二の帰還~光を照らす者~ 『小沢健二の帰還』(岩波書店)刊行を機に|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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2017年12月8日

対談=宇野維正×速水健朗
大衆音楽家、小沢健二の帰還~光を照らす者~
『小沢健二の帰還』(岩波書店)刊行を機に

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小沢健二の帰還(宇野 維正)岩波書店
小沢健二の帰還
宇野 維正
岩波書店
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「一人のポップ・スターが、ある時期を境に人びとの前から忽然と姿を消す。
やがて、二九歳から四八歳になった彼は、大きな歓声の中で華々しく復活を遂げることになる(はじめにより)」。十九年前、日本の音楽シーンの最も華やかな場所から姿を消し、二〇一七年その最前線に「帰還」した小沢健二。
「空白の時代」の活動や思索、表現について、音楽作品や文章、知られざる資料まで丹念に読み説き、その足跡を追った、宇野維正著『小沢健二の帰還』。
本書の刊行を機に、著者とライター・編集者の速水健朗氏に対談をお願いした。
無数の点を美しい線にして見せてくれた本書、対談でその線はよりしなやかなものになった。(編集部)
第1回
ポップ・スターの帰還

速水 健朗氏
速水 
 まずは、小沢健二について書こうと思ったきっかけとタイミングを伺えますか。
宇野 
 最初の著作『1998年の宇多田ヒカル』でも書いたように、自分が同時代の日本の音楽家で最も評価しているのは宇多田ヒカル、椎名林檎、aikoの三人なんです。一方、小沢健二に関しては、同じ時代をずっと生きてきたが故に、完全には相対化しきれない存在というか。同性であり、世代も近い、自分にとってのフェイバリット・アーティストとして、フリッパーズ・ギターとしてのデビュー時から、ソロ・アーティストとして日本中が知る超人気者になって、そこからニューヨークに旅立つまで、その過程をずっと熱意を持って追いかけてきました。多分、そういう人は同世代で他にもたくさんいると思うんですけど、自分の場合、一九九八年に彼がニューヨークに移住して以降も、ずっとその動向が最も気になる存在であり続けてきたんです。
速水 
 『小沢健二の帰還』というタイトルが示すように、現実に小沢健二の復活があったから、このタイミングの刊行になったのですか。
宇野 
 直接のきっかけは、二〇一六年の「魔法的」ツアーのあと、同じツアーを見た本書の担当編集者から初めて連絡をもらったことです。そのツアーは、小沢健二が一九九八年に日本を去ってから初めての、新曲がメインのツアーでした。二〇一〇年の「ひふみよ」ツアー、二〇一二年の「東京の街が奏でる」公演、いずれの公演でも新曲の披露はあったのですが、「魔法的」ツアーで披露された新曲は明らかにそれ以前の公演で披露された新曲と感触が違って、遂にポップ・スター小沢健二が帰ってきたと思えるような曲だった。ただ、その時点では自分も編集者も、二〇一七年に十九年振りのシングルCDを発売し、朝日新聞に全面広告を出して、テレビやラジオに続々出演するという、怒濤の活動が待っているとまでは想像もしていませんでした。
速水 
 執筆対象はなお動き続けていますね。
宇野 
 二月二十四日に二〇年ぶりに出た「ミュージックステーション」でフジロックフェスティバルに出ることをフライングで発表した時点で、少なくともフジロックまでは観ないと、本を書き始められないと思っていたのですが、結局その先も止まらないままずっと活動してますね。ファンとしては嬉しい限りですが(笑)。
速水 
 いつの小沢健二を書くか、その選択も重要だったと思います。フリッパーズ・ギター時代から、あるいはソロデビュー当初から書く、という選択もあったのに、本書では小沢健二が日本の音楽シーンから消えて、一般には「空白期」とみなされている時期を、執筆対象に選んでいます。
宇野 
 もし小沢健二について本を書くなら、日本からいなくなってからの小沢健二について書きたいということはずっと思ってました。
速水 
 不在の人間の足取りを、物証から追っていく。アプローチの仕方がちょっとフィリップ・マーロウっぽいですね。
宇野 
 あるいは、小沢健二さんの大学時代の先生、柴田元幸さんが翻訳していたポール・オースターの初期の小説だとか。そこはちょっと意識しました。そもそも、「渋谷系」だとか「王子様」だとか、そういうこれまでの小沢健二の語られ方には、ずっと違和感を覚えていたんです。確かに「渋谷系」や「王子様」って言葉は、小沢健二が巻き起こした現象について語る際に、どうしてもついてまわる言葉ではあるんだろうけれど、それはあくまでも特定の時期のことでしかないし、彼の音楽家としての本質、表現者としての本質について語る上ではまったく関係のないメディア用語、ファン用語でしかない。
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この記事の中でご紹介した本
小沢健二の帰還/岩波書店
小沢健二の帰還
著 者:宇野 維正
出版社:岩波書店
以下のオンライン書店でご購入できます
アイスクリームが溶けてしまう前に (家族のハロウィーンのための連作) /福音館書店
アイスクリームが溶けてしまう前に (家族のハロウィーンのための連作)
著 者:小沢 健二
編 集:日米恐怖学会
出版社:福音館書店
以下のオンライン書店でご購入できます
2017年12月8日 新聞掲載(第3218号)
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