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八重山暮らし
更新日:2017年12月19日 / 新聞掲載日:2017年12月15日(第3219号)

八重山暮らし(22)

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石垣、西表、小浜、波照間、与那国、島により黒糖の味が微かに変わる。
(撮影=大森一也)
サトウキビ刈り


サトウキビがつらなる。地を這い、くの字に曲がり、からだをよじらせ、天を目指す。てっぺんの花穂が風に揺らぐ…、残照を受け、ちらちらと光がこぼれ落ちる。細く鋭い葉がこすれ合う。乾いたざわめきが、朱色に染まり始めた空を満たしていく。

川のほとりの集落を見慣れぬ若者がひとり歩いている。引き締まった腕を大儀そうに揺らしながら。赤黒く焼けた首すじには、泥で汚れたシャツが吸い付いている。

西表島の製糖が始まった。サトウキビの刈り取りは、至極しんどい。冬の季節労働を旅人の彼らが担う。朝から夕まで鎌を振り上げ、キビを根元から切り倒す。無限とも思われるキビの畑で腰をかがめ、降っても照っても仕事は容赦なく続く。
「キビ刈りを手伝ってくれる旅からの青年が見つからん…」。人手不足を憂える生産者の声を初めて耳にしたのは、いつの頃だったろうか…。

島での季節労働を終えると、矢も楯もたまらず北の地へ旅立つ。放浪に身をやつし、奔放のままに生きる。気骨あふれる若者たち。彼らは、今、いずこをさすらっているのか…。

キビを炊く甘く粘ついた香りが、時折、川を隔てた家にも漂う。おや、風が変わったと空を見上げる。灰色に湿った雨期の晴れ間、小躍りしつつ庭に飛び出す。こっくりとした茶に染めあげた糸を絞り、竿に並べていく。向かいの畑には刈り取られたキビが重なっている。密林の山並みがひときわ青く迫って見えた。
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