【横尾 忠則】夢の非創造性を嘆く「私」に対する問題提起|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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日常の向こう側ぼくの内側
更新日:2017年12月26日 / 新聞掲載日:2017年12月22日(第3220号)

夢の非創造性を嘆く「私」に対する問題提起

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横尾版トレビの泉(マケット)

2017.12.11
 入稿した印刷物の校正が長引いているので編集者と印刷所に出向いて、催促するつもりだったが、「頑張ります」と言うので黙って帰ってくる。

朝日新聞社の廊下で美術担当の大西さんにバッタリ会う。オリンピックに焦点を合わせた美術展の企画が殺到しているそーだけれどオリンピックに興味のないぼくは社会とズレているのかなと思う。この2件はいずれも昨夜の夢だけれどわざわざ夢に仕立ててぼくに見せることないじゃないと、夢の非独創性を嘆く。

しばらく買っていなかった週刊誌を二、三購入。因果応報、自業自得をネタにした記事は相変らずだ。でも少し角度を変えればその底に人間学、人生学の哲学を見出すこともできる。

2017.12.12
 今年初の真冬の厳寒とか。空はピーカンで雲の湧き出す徴候見当らず。青ベタ一色のミニマルの空間はどことなく不気味だ。「こういう日は死がよく似合う」というような感情がフト横切る。

足治療は一種の遠隔操作だ。足の親指を刺激するだけで頭痛が解消したりする。東洋医学の超自然治療は人間を宇宙としてとらえている。

2017.12.13
 虎の門病院へ。東洋医学と西洋医学、感覚と理性をぼくの中でシェークしている。今回の定期診断の結果は血糖値、尿酸値、腎臓の数値全てが下っている。「何かしましたか?」 足揉みは言わずに、「先生のご指導に従って水とお茶は充分摂取しています」と返答して先生を喜ばす。水とお茶はぼくにとっての万能薬。

森美術館の南條館長のTELで、当館が保管している15年前に製作した「横尾版トレビの泉」の巨大マケットが崩落状態なので処分したいという報告あり。森ビルの所有物なので自由にしてくれていいのだが、このマケットに付属している数体のフィギアだけはぼくの神戸の美術館に移動したい。わが美術館の蓑館長に連絡。うまく対応されたしと願う。

野見山暁治さんから『じわりとアトリエ日記』恵贈される。自分の日記はゴミ箱行きだけれどひとの日記は宝石箱だ。97歳の高齢なのに銀座の画廊などによく出掛けられる。長寿の秘訣かも。それと文化勲章の話が何度も何度も出てくるが、これは貰った人でないとその重みがわからない。

2017.12.14
 「お前の父親がお前を連れてよく行っていたきぬ屋呉服商に郷里に帰ったついでに寄るんだなあ」と宇宙の人(宇宙人ではない)がぼくに囁いたので、行こうとしたがご主人が病気だというので中止したという夢。ところで「宇宙の人」は何者?

用もなく三省堂に入ったけれど「カント「視霊者の夢」」を買う。スウェーデンボリに対する批判の書って感じかな。理性で認識できないものは形而上学の対象にはならへんのでは、と哲学者の弁。

2017.12.15
 カフナセイジョウでスポーツマッサージを受ける。哲学者は考えるのが専門であまり行動しないと渡部昇一さんは言うがぼくは頭より躰に興味がある。

2017.12.16
 東京からかなり離れた所の個人医院に野上照代さんを案内するのだが夜中の12時になってしまった。ワゴン車に乗り込んだ所で医者の名も住所も解らないことに気づく。頭の中がガラスの破片が散乱しているようで、その一片にそれぞれのビジョンが映っているが、もう収拾のつけようがないという夢。

この間、成城整体院の女性マッサージ師からぼくの運命と性格を調べたデータをプレゼントされる。まるで神が見通したような実に適確な判断に驚く。ぼくが自分の思考の結果だと思っていることが、実は性格の成せる技であったりする。例えばぼくの創作はオリジナルなものへの信仰よりも、すでに出来上った(レディメイド)ものに手を加えたり改造して新しい作品に仕上げるとか。さらに、完成に近づくと制作を突然中断して、「未完成」として終了させるとか。これも性格の一部で、ぼくの思考の結果などとは全く無関係で、「ただそーしたいから、そーする」というのが理由であるらしい。「私」に対する興味尽きない問題提起で実に興味深い。

2017.12.17
 渡部昇一の『知的余生の方法』と『実践 快老生活』を買う。

新作に取りかかる。結果が100%見えない。こーいうのをイキアタリバッタリというのかなあ。テレビで「スターウォーズ」を観る。ポンコツ機械を超ハイテクがアナログ人間によって操縦させているがそんな未来に希望はある?
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