2017年 出版 動向 児童書・学参が好調、雑誌かつてない落ち込み、輸配送問題など|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2017年12月22日 / 新聞掲載日:2017年12月22日(第3220号)

2017年 出版 動向
児童書・学参が好調、雑誌かつてない落ち込み、輸配送問題など

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2017年の出版物販売実績は前年比約6%減となる見込みだ。書籍は児童書、学参が引き続き好調に推移し、文芸書や新書でもヒットがコンスタントに登場。とはいえベストセラーの部数水準は前年を下回っており、同3%程度のマイナスとなる見込みだ。雑誌はかつてない落ち込みを示し、約10%減。定期誌とともにコミックス単行本のマイナスが深刻だ。雑誌の売り上げ低迷とそれに伴う業量の減少、ドライバー不足等の輸配送問題は業界内でも議論され、17年度の土曜休配日を前年度比8日増の13日と段階的に増やしている。またアマゾンジャパンが日本出版販売の非在庫商品を出版社から取り寄せる発注(バックオーダー発注)を6月末で取りやめることを決定。同社は出版社との直取引拡大に注力しており、業界内で波紋を呼んだ。
蜜蜂と遠雷(恩田 陸)幻冬舎
蜜蜂と遠雷
恩田 陸
幻冬舎
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文芸書では、佐藤愛子『九十歳。何がめでたい』(小学館)が11月にミリオンを突破。各社発表の年間ベストセラー第1位に選出された。1月に直木賞、4月に本屋大賞をダブル受賞した恩田陸『蜜蜂と遠雷』(幻冬舎)は年間を通して売れ続け、57万部のヒットに。2月には村上春樹の7年ぶりの長編小説『騎士団長殺し 第1部・第2部』(新潮社)が発売され、書店では各種イベントが盛況に実施された。2点計138万部もの大部数が発行され、初速が良かった。住野よる『君の膵臓をたべたい』(双葉社、85万部)は7月に実写映画化され、17年もブレイク。住野氏の作品は、『か「」く「」し「」ご「」と「』(新潮社、26万部)、『よるのばけもの』(双葉社、20万部)などいずれも大ヒット。川口俊和『コーヒーが冷めないうちに』(サンマーク出版)は長期的に売り伸ばし、57万部に到達した。東野圭吾は『マスカレード・ナイト』(集英社)や『素敵な日本人』(光文社)などがファンに支えられ、安定した売れ行き。ベストセラー『火花』(文藝春秋)に続く又吉直樹2年ぶりの新刊『劇場』(新潮社)は初版30万部で発行。累計33万部。宿野かほる『ルビンの壺が割れた』は、無名の新人作家の作品だが、新潮社がWeb上で全文を無料公開、キャッチコピーを一般公募するなどの施策がTwitter等で話題を呼び、売り伸ばした。「オーバーロード」シリーズ(KADOKAWA)などのWeb発小説は引き続き刊行が活発だった。
ノンフィクション読み物では、吉野源三郎の名著を新装刊行した『君たちはどう生きるか』(マガジンハウス)が大ヒット。同書の漫画版は17年内の重版で95万部に達した。前述の佐藤愛子を筆頭に、髙橋幸枝『100歳の精神科医が見つけたこころの匙加減』(飛鳥新社)、7月に105歳で逝去した日野原重明『生きていくあなたへ』(幻冬舎)、90代の現役料理研究家・桧山タミ『いのち愛しむ、人生キッチン』(文藝春秋)など100歳前後の超高齢著者のエッセイが特徴的な売れ方を示した。自己啓発書では、岸見一郎、古賀史健『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社)が158万部に達し、17年も売れ続けた。田中圭一『うつヌケ』(KADOKAWA)、汐街コナ著、ゆうきゆう監修『「死ぬくらいなら会社辞めれば」ができない理由』(あさ出版)など、うつ病、過労自殺といった社会問題を扱ったコミックエッセイがヒットした。タレント本では『パスポート白石麻衣写真集』(講談社、24万部)や『encourage 石原さとみ写真集』(宝島社、12万9千部)など写真集のヒットが相次いだ。

ビジネス書は全体的に低調だったが、横山光昭『はじめての人のための3000円投資生活』(アスコム、57万部)や堀江貴文『多動力』(幻冬舎、24万部)は年間を通して売れ続けた。

17年も新しい動きが多かったのが児童書。特に高橋書店の今泉忠明監修『ざんねんないきもの事典』とその続編『続ざんねんないきもの事典』は2点で120万部を突破し、連日メディアで紹介されるなどブームを呼んだ。ポプラ社のトロル「おしりたんてい」シリーズやヨシタケシンスケの絵本はブレイクした。児童文庫、学習漫画、図鑑なども引き続き健闘したが、老舗出版社のロングセラー絵本や読み物はやや苦戦。ブロンズ新社の赤ちゃん絵本、かがくいひろし「だるまさん」シリーズは3点累計520万部を突破。学参は、小・中・高校学参いずれも前年を上回る売れ行きとなった。17年は文響社の「うんこ漢字ドリル」シリーズが3月の発売以来、一大ブームを呼び、6点累計で278万部と驚異的な売れ行きとなった。17年はメディアの後押しで爆発的なヒットとなる書籍が多く、出版社のプロモーション活動が注目された。
応仁の乱(呉座 勇一)中央公論新社
応仁の乱
呉座 勇一
中央公論新社
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教養新書は、呉座勇一『応仁の乱』(中公新書、43万部)やケント・ギルバート『儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇』(講談社+α新書、46万部)を筆頭にヒットが多数登場した。各社が新聞広告を強化し、その販売効果が大きく表れた。料理レシピ本大賞を受賞した、はらぺこグリズリー『世界一美味しい煮卵の作り方』(光文社新書)も好売れ行きに。文庫本市場は14年から3年連続で6%台の減少となったが、17年も5%程度のマイナスとなる見込みだ。映像化作品や人気作家の新刊は底堅く売れたが、既刊の販売不振が深刻で苦戦している。10月に日本生まれで英国籍の作家、カズオ・イシグロがノーベル文学賞を受賞。早川書房は『日の名残り』など既刊文庫を一気に100万部超の増刷をかけた。また、文藝春秋の松井清人社長が10月の全国図書館大会で文庫本の図書館貸出中止を要請し、メディアで多くの議論を呼んだ。

実用書はサンマーク出版、佐久間健一『体幹リセットダイエット』(50万部)や飛鳥新社、西山耕一郎『肺炎がいやなら、のどを鍛えなさい』(36万部)、崎田ミナ『ずぼらヨガ』(22万部)、アスコム、寺林陽介『疲れをとりたきゃ腎臓をもみなさい』(27万部)などテレビ等でのPRに力を入れた一般書出版社のタイトルに売れ行きが集中した。

雑誌は、発行部数が1割以上減少する銘柄が目立ち、非常に苦戦した。休刊点数が創刊点数を約30点上回っており、男性誌『STREETJACK』(ベストセラーズ)や総合誌『考える人』(新潮社)、『文藝春秋SPECIAL』(文藝春秋)など有名雑誌の休刊が目立った。創刊誌は分冊百科やパズル誌が半数を占め、市場を活性化する材料が乏しい。

比較的売れ行きが好調だったのが、豪華付録を添付した女性誌や美容誌、アイドル関連誌。ジャニーズグループや韓流アイドル、乃木坂46を表紙や特集に起用したことで完売する雑誌も見られた。電子書籍の伸びが著しいコミックは、紙の単行本が1割程度の過去最大の落ち込みを示した。
この記事の中でご紹介した本
蜜蜂と遠雷/幻冬舎
蜜蜂と遠雷
著 者:恩田 陸
出版社:幻冬舎
以下のオンライン書店でご購入できます
君たちはどう生きるか/マガジンハウス
君たちはどう生きるか
著 者:吉野 源三郎
出版社:マガジンハウス
以下のオンライン書店でご購入できます
応仁の乱/中央公論新社
応仁の乱
著 者:呉座 勇一
出版社:中央公論新社
以下のオンライン書店でご購入できます
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