私の2017年 スキゾな活動にお墨付き|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2017年12月27日 / 新聞掲載日:2017年12月22日(第3220号)

私の2017年
スキゾな活動にお墨付き

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ときどき自分の肩書きをどう書けばいいのか、本当にわからなくなる。九月に共訳書『メイキング人類学・考古学・芸術・建築』(ティム・インゴルド著、左右社)が刊行された。二冊目の訳書になるから世間的には「翻訳家」であるのか。それとも人類学的な単著もあるので「人類学研究者」と名乗ればいいか。だいたい、この本自体が四つの学問と芸術を含んだ領域横断的な書なので、頭が混乱してしまう。
同じ月に拙著『ドキュメンタリー映画術』(論創社)も刊行された。羽仁進、羽田澄子、大津幸四郎ら十人のインタビューを収録し、八年間書き続けたレビューや論考をおさめている。ここでは「映画評論家」で「映像作家」である。だが、この本を教科書にして学校で教えるときには、きっと「教員」の顔をしているのだろう。周囲の環境にあわせて色を変えるカメレオンのように肩書きが七変化するのは、食いつめた挙げ句、長年さまざまな仕事を請け負うしかなかった悲しい境遇に由来している。
今年は、そんなスキゾ人間のわたしを救済してくれる出来事があった。六月に出た拙著『映像の境域 アートフィルム/ワールドシネマ』(森話社)が、サントリー学芸賞の芸術・文学部門で受賞したのだ。現代詩手帖に連載した第一章「映像詩の宇宙」では、戦後のフランスとアメリカにおけるアヴァンギャルド映画を論じながら「映像にとって詩とは何か」という問いに素手でぶつかった。第二章以降はラテンアメリカ、ロシア、グルジア、パレスチナ、沖縄におけるワールドシネマを論じている。

ノミネートされたことすら知らなかったので、連絡をもらったときには驚いた。だが、これまでの受賞者が「従来の学問の境界領域での研究、フロンティアの開拓などの点」で評価されていることを知り、頂けるとしたらこの賞の他にはなかったとも感じた。これでお墨付きをもらったので、今後も臆することなく複数の肩書きを駆使し、既存の枠組みにとらわれない自由な文筆活動をしようと開き直っている。
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