2017年回顧 写真 写真は経験を記録、共有する重要なツールに|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2017年12月27日 / 新聞掲載日:2017年12月22日(第3220号)

2017年回顧 写真
写真は経験を記録、共有する重要なツールに

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流行語大賞に「インスタ映え」が選ばれた。写真を撮ってSNSに投稿したくなるような風景やモノ、状況のことだ。動画も共有できるが、写真は加工がしやすく、一瞬で見られるためインパクトが強い。モノ消費よりコト消費と言われる現代では、写真は経験を記録、共有する重要なツールになっている。

日記写真と言えば荒木経惟である。今年、国内外で一五を超える展覧会が開かれ、そのほとんどに新作が加えられるという超人ぶりを発揮した。ヌード、ポートレートなどのほかに、日付入りの写真がびっしりと壁を埋めるのはいつものことだが、今回はそれらがSNSの写真とかぶって見えて仕方がなかった。人はなぜ日々を記録し、共有したがるのか。荒木はSNSが顕在化させたその欲望を先取りしたとも言えるが、それだけではない。ニセの日付を使うことで、新たな物語を「創作」している。ここに荒木の天才性がある。

また、展覧会に合わせてさまざまな荒木論が書かれた。東京都写真美術館の『荒木経惟 センチメンタルな旅1971―2017』に収められた笠原美智子の「囚われの荒木」は白眉。現代のジェンダー論を踏まえて荒木作品を分析することで荒木作品の読み方を広げた。

荒木の展示もそうだが、写真作品の展示において、さまざまなインスタレーションが試みられている。今年最大の収穫は『志賀理江子 ブラインドデート』展(丸亀市猪熊弦一郎現代美術館)。真っ暗闇の会場に、照明に照らされた写真プリントと、スライドショーにより現れては消えるイメージが強い印象を残した。演出とスナップ、写真と言葉、闇と光がそれぞれ拮抗し、緊張感のある「場」を作り出していた。表現と社会との関わりをテーマにしたレクチャーも展示の一部であり、それらすべてを記録した図録はこれから刊行予定とのこと。写真の力をてこに展開する構想力が素晴らしかった。

一方、写真をイメージを載せた物体と捉え、立体作品のように扱う展示がこの何年か増えている。光田ゆりの企画による複数の作家の個展を連続させるシリーズ「鏡と穴―彫刻と写真の界面」は時宜にかなった企画だ。なかでも小松浩子の展示は銀塩写真で会場を埋め尽くし、薬品の匂いが充満するカオティックな状況を作り出し圧巻だった。
PEELING CITY (新納 翔 )ふげん社
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写真表現に眼を向けると、ストリート・スナップに復権の傾向がある。昨年に続き「アサヒカメラ」がスナップ特集を組んだほか、森山大道の『Pretty Woman』(Akio Nagasawa Publishing)のほか、木村伊兵衛写真賞を受賞した原美樹子、写真同人誌「Void Tokyo」の鈴木達朗、『口笛』(LITTLE BIGMAN)の星玄人、『PEELINGCITY』(ふげん社)の新納翔の仕事が印象に残った。

最後にSNSに話を戻そう。「インスタ映え」に飽き足らないのか、銀塩写真のテーストを好む若者が増えている。その火付け役とも言えるのが奥山由之。まだ二十代で、ファッションや広告、展覧会、写真集と横断的な活躍をしている。久々のスター写真家だ。
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