2017年回顧 社会学 見事な絵巻物社会誌  ――西川祐子『古都の占領』――|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2017年12月28日 / 新聞掲載日:2017年12月22日(第3220号)

2017年回顧 社会学
見事な絵巻物社会誌 
――西川祐子『古都の占領』――

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西川祐子『古都の占領―生活史からみる京都1945―1952』(平凡社)。占領期の京都を庶民の語りや多様な資料から読み解く。著者の思いもあふれ出る見事な絵巻物的社会誌だ。高谷幸『追放と抵抗のポリティクス』(ナカニシヤ出版)。非正規移民がいかに追放され、彼らは抵抗してきたのか。戦後日本が設定した〈境界〉の効果と権力性を明らかにする。朴沙羅『外国人をつくりだす』(ナカニシヤ出版)。戦後日本における「密航」と入国管理制度を文書資料と聞き書きで得た語りから論じるオーソドックスな社会学研究書だ。木下直子『「慰安婦」問題の言説空間』(勉誠出版)。「慰安婦」問題でいかに日本人「慰安婦」が不可視化されたのか。詳細な言説分析からそこに息づいている問題を摘出する。小井土彰宏編『移民受入の国際社会学』(名古屋大学出版会)。移民受入の先進国と後発国を比較し、選別的移民政策の課題と将来を展望する。広汎な視野をもつ論集だ。

渡辺拓也『飯場へ』(洛北出版)。著者自身の体験から底辺労働者の暮らしと仕事が詳細に描かれる。本の厚みと同様「分厚い」エスノグラフィーの秀作だ。矢吹康夫『私がアルビノについて調べ考えて書いた本』(生活書院)。アルビノと当事者の生きづらさを考えることができる一人称の社会学。思わず読みふけってしまう。三浦耕吉郎『エッジを歩く―手紙による差別論』(晃洋書房)。差別する者であると同時にされる者としての生のかたちとは何か。手紙の文体で著者は丁寧に語りかける。熊田陽子『性風俗を生きる「おんなのこ」のエスノグラフィー』(明石書店)。都市に生きる女性たちの可能な生き方の一つとして性風俗世界を読み解く意欲作だ。

轡田竜蔵『地方暮らしの幸福と若者』(勁草書房)。実証的調査から地方暮らしの若者の実態と意識を丁寧に描きだし、今後の課題を提言する地に足がついた優れた研究成果だ。武岡暢『生き延びる都市―新宿歌舞伎町の社会学』(新曜社)。参与観察、聞き取り、各種資料を駆使し歌舞伎町を「分厚く」記述し「場」の特性、再生産のメカニズムを明らかにする労作だ。吉光正絵・池田太臣・西原麻里編『ポスト〈カワイイ〉の文化社会学』(ミネルヴァ書房)。ポスト〈カワイイ〉時代の女性文化を読み解く挑戦的な論集だ。北田暁大・解体研編『社会にとって趣味とは何か』(河出書房新社)。現代若者のサブカルチャーへの計量社会学的実証研究成果から新たな文化社会学の方法基準を提起する。川口隆行編『〈原爆〉を読む文化事典』(青弓社)。〈原爆〉が喚起させる多様な問題や文化を広く深く読める。いま〈原爆〉を考えるうえで必須の事典だ。奥村隆『社会はどこにあるか』(ミネルヴァ書房)。社会とは何かを考え、社会学することの根源を問う。自在に語られる奥村社会学の深みにはまっていく快感がとてもいい。

小笠原博毅『セルティック・ファンダム』(せりか書房)。丁寧なフィールドワークからグラスゴーにおけるサッカー文化と人種問題を鋭利に論じる優れた作品だ。村田周祐『空間紛争としての持続的スポーツツーリズム』(新曜社)。スポーツツーリズムと地域のせめぎあいを詳細に検討し挑戦する地域が何を守るのかを明らかにする秀作だ。八田益之・田中研之輔『覚醒せよ、わが身体―トライアスリートのエスノグラフィー』(ハーベスト社)。トライアスロンがもつ固有の社会性と文化性を自らの身体で解き明かす社会学的物語だ。

串田秀也・平本毅・林誠『会話分析入門』(勁草書房)。これまでの知見を丁寧に解説し相互行為・制度・社会組織の分析可能性を射程に入れた会話分析の決定版テキスト。水川喜文・秋谷直矩・五十嵐素子編『ワークプレイス・スタディーズ:はたらくことのエスノメソドロジー』(ハーベスト社)。他者との協働作業を焦点化した仕事をめぐる応用エスノメソドロジー・会話分析論集。増田展大『科学者の網膜』(青弓社)。一九世紀末から二〇世紀初めにおける人々の身体を把捉する映像技術と科学者の身ぶりを詳細かつ具体的に掘り起こす。秀逸な視覚文化論だ。
この記事の中でご紹介した本
古都の占領 生活史からみる京都 1945‐1952/平凡社
古都の占領 生活史からみる京都 1945‐1952
著 者:西川 祐子
出版社:平凡社
以下のオンライン書店でご購入できます
飯場へ ―― 暮らしと仕事を記録する /洛北出版
飯場へ ―― 暮らしと仕事を記録する
著 者:渡辺 拓也
出版社:洛北出版
以下のオンライン書店でご購入できます
地方暮らしの幸福と若者/勁草書房
地方暮らしの幸福と若者
著 者:轡田 竜蔵
出版社:勁草書房
以下のオンライン書店でご購入できます
セルティック・ファンダム  グラスゴーにおけるサッカー文化と人種/せりか書房
セルティック・ファンダム グラスゴーにおけるサッカー文化と人種
著 者:小笠原 博毅
出版社:せりか書房
以下のオンライン書店でご購入できます
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