私の2017年 あなたと私の推薦本へ|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2017年12月28日 / 新聞掲載日:2017年12月22日(第3220号)

私の2017年
あなたと私の推薦本へ

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「人に薦めたくなる本を目指しましょう」

出版に向け、推敲を重ねているとき、担当編集者の三宅貴久さん(光文社新書)からもらった合言葉だ。とは言うものの、バッタを倒しにアフリカへ行った本なんか人様に薦めてもらえるのかしら。

ところが出版後、ツイッターを覗いてみると、読者の方々は思い思いの書評を公開し、書店員さんたちは悪ふざけに近い奇抜なPOPを片手に次なる読者に薦めてくれている。なんと嬉しいことか。一部の物好きたちがつくった勢いは止まらず、なんと刊行後三ヶ月で累計一〇万部に達した。

出版と時同じく、盛岡の駅ビルに「さわや書店ORIORI」が誕生した。新店の棚を飾るにふさわしき本を選抜するのは、楽しくも悩ましい作業のはず。そんな彼らは、あろうことか、バッタ本を初代センター本に選んでくださる暴挙に出た。前評判は一切なく、ただでさえ緑色の服でバッタのコスプレをした男が表紙のふざけた本だ。著者としては嬉しいが、一生に一度の乙女のファーストキスを奪ったときに芽生えたような罪悪感が蘇った。
彼らの心意気に応えねば。かくして、新店にてトークイベントを夏休みに開催してもらえることに。通路に面したイベントスペースには、買い物途中の方々も気軽に立ち寄れる。物珍しいバッタ話に夢中のお客さまたちの後ろで立ち見している書店員さんたち。その目には、生まれて間もない書店の成長を見守る、子育て中の両親のような優しさが溢れていた。彼らに愛されながらも読者の元へと旅立っていく本たちが幸せそうに見えた。

その後、この本は毎日出版文化賞・特別賞を受賞した。特別賞は、広く読者に支持された著作物に与えられる。いくら優れた本でも、広く読者に支持されないことには特別賞はもらえない。すなわち、多くの書店員や読者の推薦なくして受賞はできない賞なのだ。勇気を出して店頭に飾ってくれた書店員さん。炎上の危険を顧みずにツイートしてくださった読者たち。みんなが薦めてくれたおかげで、三宅さんの合言葉に込められた想いがカタチになった。喜びと感謝に満ちた一年であった。
この記事の中でご紹介した本
バッタを倒しにアフリカへ/光文社
バッタを倒しにアフリカへ
著 者:前野 ウルド 浩太郎
出版社:光文社
以下のオンライン書店でご購入できます
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