2017年回顧 東洋史 中国史、朝鮮史、インド、ペナン、トルコなど興味深いラインナップ|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2017年12月28日 / 新聞掲載日:2017年12月22日(第3220号)

2017年回顧 東洋史
中国史、朝鮮史、インド、ペナン、トルコなど興味深いラインナップ

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まず中国史から概観しよう。新居洋子『イエズス会士と普遍の帝国』(名古屋大学出版会)は、清朝に仕えた宣教師に注目。清朝公用語である満洲語を、欧洲の「文芸共和国」やフランス語と結び付ける発想など興味深い。同じくキリスト教では、土肥歩『華南中国の近代とキリスト教』(東京大学出版会)が、布教活動と広州地域社会の人的ネットワークの連環を描いた。この広州での貿易に着目したのが藤原敬士『商人たちの広州』(東京大学出版会)と松尾文夫『アメリカと中国』(岩波書店)だ。とりわけ松尾著は二百年の両国関係史をダイナミックに描き出した。
岡本隆司『中国の誕生』(名古屋大学出版会)は、清朝から「中国」というネイション成立への転換過程を、漢語概念に着目することで明らかにした大作。同じく政治概念に注目した家永真幸『国宝の政治史』(東京大学出版会)は、故宮文物とパンダが「国宝」と呼ばれるに至る経緯を解き明かした。

概説書では、ニュースでもおなじみのテーマを歴史から追った小野寺史郎『中国ナショナリズム』(中公新書)や、中国における「軍」なる存在が、如何なる経緯で成立したのかを解説した澁谷由里『〈軍〉の中国史』(講談社現代新書)が面白い。また新視覚から歴史を捉えなおす試みとして、叢書東アジアの近現代史(講談社・全六巻)がスタートし、「憲政」をキーワードに中国近現代を読み解いた中村元哉『対立と共存の日中関係史』など、興味深いラインナップが揃う。

各地に分散する地形図や空中写真を博捜し、近代南京の土地利用に迫った片山剛編『近代東アジア土地調査事業研究』(大阪大学出版会)は、他に類例のない興味深い研究であり、人民共和国外交史を専門に扱った益尾知佐子・青山瑠妙・三船恵美・趙宏偉『中国外交史』(東京大学出版会)は、今後当該分野の良き指南となろう。

朝鮮史では、先史から近現代に至る最新の研究成果に基づいた浩瀚な概説書、李成市・宮嶋博史・糟谷憲一編『朝鮮史』全二巻(山川出版社)を得た。最近深化の著しい朝鮮近代史では、森万佑子『朝鮮外交の近代』(名古屋大学出版会)が、対外関係から外交への転換を捉えなおした。植民地時期では、中国・ロシアと国境を接する地域社会を、加藤圭木『植民地期朝鮮の地域変容』(吉川弘文館)が検討した。この他、小倉紀蔵『朝鮮思想全史』(ちくま新書)は、朝鮮の思想史を通観できる貴重な成果であり、親日派に注目した木下隆男『評伝 尹致昊』(明石書店)も興味深い。

視野を南西に広げると、神田さやこ『塩とインド』(名古屋大学出版会)が、一八世紀後半以降のインドで生じた多様な社会変化を明らかにし、篠崎香織『プラナカンの誕生』(九州大学出版会)は、二〇世紀初頭、積極的な政治参加を目指した海峡植民地ペナンの華人たちの動きを追った。また共和国トルコの歩みを概観した今井宏平『トルコ現代史』(中公新書)も、新書版ながら読み応え十分であった。

最後に東洋史の枠を超えるが、研究潮流が生む思考の束縛(本稿も無縁ではない!)の存在を再認識させてくれた井上章一編『学問をしばるもの』(思文閣出版)も付け加えておきたい。
この記事の中でご紹介した本
イエズス会士と普遍の帝国 在華宣教師による文明の翻訳/名古屋大学出版会
イエズス会士と普遍の帝国 在華宣教師による文明の翻訳
著 者:新居 洋子
出版社:名古屋大学出版会
以下のオンライン書店でご購入できます
中国の誕生 東アジアの近代外交と国家形成/名古屋大学出版会
中国の誕生 東アジアの近代外交と国家形成
著 者:岡本 隆司
出版社:名古屋大学出版会
以下のオンライン書店でご購入できます
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