2017年回顧 日本史/古代史 今年も蘇我氏関係の収穫 日記・古記録の成果が纏めてみられた|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2017年12月28日 / 新聞掲載日:2017年12月22日(第3220号)

2017年回顧 日本史/古代史
今年も蘇我氏関係の収穫 日記・古記録の成果が纏めてみられた

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昨年に続いて今年も蘇我氏関係の収穫があった。平林章仁『蘇我氏と馬飼集団の謎』(祥伝社新書)は、蘇我氏の発祥・台頭と発展、特に馬飼集団・馬匹文化との関係に注視して論述する。遠山美都男『蘇我氏と飛鳥』(吉川弘文館)、稲目・馬子・蝦夷・入鹿と蘇我氏四代について考察を加え、「蘇我氏の飛鳥をあるく」との遺跡ガイドの記事も載せる。また、いつでも多くの人の関心をひく邪馬台国、文献と考古学の成果を徹底検証して邪馬台国への道程や所在地という不朽の課題を考究した塚口義信『邪馬台国と初期ヤマト政権の謎を探る』(原書房)がある。

今年の特徴として、平安時代の日記・古記録の成果が纏めてみられた。大津透・池田尚隆編『藤原道長事典』(思文閣出版)は、道長の日記『御堂関白記』の注釈本である山中裕編『御堂関白記全註釈』全十六冊の註釈文から語句を抽出し、「政務・儀礼」「官司・官職」「邸宅・地名」など十一項目に分別、解説したもので、『御堂関白記』以外にも日記を理解するのに有効。大島幸雄『平安後期散逸日記の研究』(岩田書院)は、散逸した十八の公卿日記の逸文を蒐集して、条文の復原を図ることは勿論、記主や政治事情を論じるなど手堅い内容となっている。松薗斉『日記に魅入られた人々』(臨川書店)は、藤原宗忠の『中右記』、藤原頼長の『台記』など八日記をテキストに、その記主の人間性を洞察する。松薗斉・近藤好和編著『中世日記の世界』(ミネルヴァ書房)は、藤原師輔の『九条年中行事』や藤原実資の『小野宮年中行事』、大江匡房の『江家次第』など、日記と有職故実書を取扱う。

時代は前後するが、奈良時代の人物について興味ある著作を四点あげる。土橋寛『持統天皇と藤原不比等』(中公文庫)は、復刊であるが、なぜ持統天皇が軽皇子(文武天皇)即位への協力者として不比等を選んだのかの命題について私見を示す。不比等つながりで、大山誠一『神話と天皇』(平凡社)は、天孫降臨神話・出雲神話などに焦点をあわせて、これらの成立には不比等が中心的な役割を果たしたことを論証する。瀧浪貞子『光明皇后』(中公新書)も前半で「光明皇后」の父である不比等について論及している。そして、仏教活動を中心に聖武天皇の内助の功として語られることの多かった光明皇后の他面にも注目して、政治・社会、文化、宗教に大きく関わり時代を動かす原動力となったとする、その生涯を説き明かそうとする。同じ時代をテーマとした藤井一二『大伴家持』(中公新書)は、プロローグに、「家持の歩みについて、政治環境や人間関係、そして作家活動を中心に再構成することを意図」しているとあり、光明皇后と政治的には対極にあった家持を描く。このほかに称徳天皇の側近公卿などを論説した十川陽一『天皇側近たちの奈良時代』(吉川弘文館)や奈良・平安時代の太上天皇の存在をテーマにした中野渡俊治『古代太上天皇の研究』(思文閣出版)は、ともに皇権の実態に迫っている。

日朝関係史(関 周一)吉川弘文館
日朝関係史
関 周一
吉川弘文館
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さらに対外的なものとして、関周一編『日朝関係史』(吉川弘文館)、加藤謙吉『渡来氏族の謎』(祥伝社新書)や、渤海に触れた論を収める小口雅史編『古代国家と北方世界』(同成社)がある。情報伝達を概念に駅伝制度とその実情を追究した大著の市大樹『日本古代都鄙間交通の研究』(塙書房)と近江俊秀『古代日本の情報戦略』(朝日新聞出版)、物部氏の伝承に関説する日野昭『日本古代の氏族と宗教』(和泉書店)、井上内親王ら伊勢斎王を詳述した所京子『斎王研究の史的展開』(勉誠出版)なども貴重な収穫。
この記事の中でご紹介した本
蘇我氏と馬飼集団の謎/祥伝社
蘇我氏と馬飼集団の謎
著 者:平林 章仁
出版社:祥伝社
以下のオンライン書店でご購入できます
持統天皇と藤原不比等/中央公論新社
持統天皇と藤原不比等
著 者:土橋 寛
出版社:中央公論新社
以下のオンライン書店でご購入できます
日朝関係史/吉川弘文館
日朝関係史
著 者:関 周一
出版社:吉川弘文館
以下のオンライン書店でご購入できます
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