さよなら、田中さん 書評|鈴木 るりか(小学館)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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書評アイドル 渡辺小春が読む芥川賞
更新日:2017年12月24日

最近の中学生は凄い。
【番外編】「さよなら、田中さん」著者・鈴木るりか 2017年、小学館より小説デビュー

さよなら、田中さん
著 者:鈴木 るりか
出版社:小学館
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最近の中学生は凄い。そう感じたのは、今年を振り返ってみて、私と同じ年頃の中学生たちが各界で大活躍した一年だったからだ。将棋界では29連勝を成し遂げた藤井聡太4段、卓球界では、世界選手権でベスト8に入った張本智和選手、音楽界では、アルバムをリリースしたギターリストのLi-sa-X。そして11月、文学界では、鈴木るりかさんが『さよなら、田中さん。』でデビューを果たした。

この本の帯には、「文学界に、驚異のスーパー中学生、現る!!」「鳥肌が立つような才能」となんだか凄い文が並んでいた。さぞかし難しい話なのかと思っていたが、読んでみると児童書のようにとても読みやすく、ほっこりと、笑える本だった。貧乏な母子家庭に生まれた小学六年生、田中花実を軸とした日常を描く5つの連作短編集で、花実のお父さんや憧れの遊園地への気持ち、工事現場で働く明るい肝っ玉母さん、認めてもらえない受験生の男の子、などの個性豊かな登場人物、花実の暮らしぶりを面白おかしく描いたもの、泣けるような話まで、たくさんの物語が楽しめる。その収録作品の中でも心に残っているのは「いつかどこかで」。花実が同じクラブの友達と、その子の前のお父さんを再会させ、気まずい雰囲気の中、ファミレス、遊園地を一緒に楽しみながら、花実は自分が生まれる前に死んだ知らないお父さんという存在について考える、複雑な人間関係と心情を描いたドラマチックな物語だ。特に「お父さんがいなくて淋しいか、」から始まる冒頭は、花実のその複雑な心情に引き込まれとても印象に残った。
一番驚いたのは物語の主人公は、るりかさん本人がモデルではないということだ。この物語の中にある「秋になると銀杏を拾う」、「自動販売機の小銭を探す」・・・などのエピソードは確かにありきたりかもしれないが、銀杏を主食並みに食べている母親が「腹減って死ぬより銀杏食ってしぬほうがいい。」というと、「ほかのものを食べるという選択肢はないのか」と花実が冷静にツッコミを入れる。その花実と母親のやり取りはくすっと笑えて、いきいきとしていて、たくましい。この人物像は引っ越してきた家族と、通学途中で見た工事現場で働いていた女性をるりかさんが実際に見たことからアイデアが浮かんだそう。

同じ中学2年生のるりかさんの描くこの物語と私との共通点も多くあり、勝手に親近感を抱いている。例えば私も大好きで、毎月楽しみにしていた「ちゃお」という月刊の漫画雑誌、卒業を記念に友達と行った遊園地のことなど、楽しかった小学生の頃を思い出す。心が温まり、笑えて、懐かしくなって、楽しめる作品だった。また、るりかさんは将来はシナリオや、漫画にも挑戦したいそう。さらに、芥川賞をとるのも夢だという。
私もるりかさんと同じ中学2年生だが、勉強や、アイドル活動、ダンスなど、スーパー中学生と呼ばれるような凄いことはしてはいないが、今を楽しく、どこかに向かって頑張って毎日を過ごしている。私が大人になるころ、同じ歳の彼女がどうなっているのか、私もとても気になる。


「知り合いのアイドルグループのくらむずさんと一緒に12月10日、秋葉原の「PLUM」で、“くらむずとこはる。”として、久しぶりにライブに参加してきました。『読書人』の連載を毎回楽しみにしてくれている人もいて、とても嬉しかったです。楽しいライブでした」
この記事の中でご紹介した本
さよなら、田中さん/小学館
さよなら、田中さん
著 者:鈴木 るりか
出版社:小学館
以下のオンライン書店でご購入できます
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