金曜日の本屋さん 書評|名取 佐和子(角川春樹事務所)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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【書評キャンパス】大学生がススメる本
更新日:2017年12月27日

名取 佐和子著『金曜日の本屋さん』
愛知大学 小島 友里亜

金曜日の本屋さん
出版社:角川春樹事務所
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 私は「読みたい本」を探しにほぼ毎日書店へ行く。読みたい本と言っても、すでに何が欲しいか決まっていることもあれば、まだ知らない面白そうな本を探す場合もある。私が紹介する本は後者である。

本書は、倉井史弥(主人公)が病気で入院している父から以前借りた本を返して欲しいと言われるところから始まる。しかし彼はその本(庄司薫の『白鳥の歌なんか聞こえない』。この本は単行本から文庫本までさまざまなバージョンである。)を失くしていた。父へ本を返すためにいろんな本屋で購入し渡すがどれも「これじゃない」と返されてしまう。ある日、「北関東の小さな駅の中にある本屋は“読みたい本が見つかる本屋”らしい」というネット上の書き込みを目にする。藁にもすがる思いで彼はその本屋へ向かった。

あらすじを読んだ時、この本は私が「読みたい本」だと感じた。何故そう思ったかというと言葉にすると難しいが、文の言葉を借りると「私の第六感」だと思う。また、タイトルもシンプルだけど不思議で、物語に登場する本屋は金曜日しか営業していないお店なのか、等いろいろ妄想が広がった。

本書をオススメする理由は、読みやすい文章で普段活字に触れてない人でも手に取りやすい文体なのはもちろん、本文中に出てくる本が実在する本であるからだ。例えば主に扱われた本は、『白鳥の歌なんか聞こえない』を始め、『長いお別れ』(レイモンド・チャンドラー)、『モモ』(ミヒャエル・エンデ)、『家守綺譚』(梨木香歩)等、他にも紹介しきれないほど登場している。初めて知った本も多かったので、その都度気になったら検索した。今まで知らなかった本を知る機会になった。

実際に読んで私は、著者は本当に本が好きな人だと感じた。まず、「あとがき」に各話で主に取り扱った本にまつわる個人的なエピソードが書かれている。それは一言二言レベルではなく、この本を知ったきっかけや読後の感想等で、ここだけでも十分に読み応えある。また、その本に出てくる台詞を上手く活用し、登場人物が成長していくよう物語を進めていくところに作家としての凄さを感じた。元になった本を読んだことがなくても、重要なシーンは引用されているので困ることはなかった。

本書を読んで印象に残ったシーンがある。主人公は父の本棚から本を借りるくらいだから本が好きな少年だと思っていた。しかし彼はみんなが納得するような感想が言えなかったり、根本的な解釈を間違えたりするから読書をする資格がないと言ってしまう人であった。しかし、主人公の言葉を聞いた本屋の店長である南槇乃が「読書は究極の個人体験です。人によって響く部分が違うのは、当たり前なのです。(中略)好きに読めばいいんです。感想を誰かと同じになんかしなくていいんです」(p.46)と返すシーンだ。私も本を読んで他の人との感想を読んでいると、相手と解釈が全く違っていたりして自分の読解力のなさに落ち込む時がある。南槇乃の台詞を読んで、解釈や感想が他人と違っていても気にする必要はないと思えるようになった。もし主人公みたいに読解力がないから読書をしない、という人がいれば、究極の個人体験だと考え読書をして欲しい。

本書は私にとって「よい」本である。この書評を読んでいる人にもこれから沢山の「よい」本との出会いがあるよう願っている。
この記事の中でご紹介した本
金曜日の本屋さん/角川春樹事務所
金曜日の本屋さん
著 者:名取 佐和子
出版社:角川春樹事務所
以下のオンライン書店でご購入できます
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