【横尾 忠則】谷崎と荷風と鏡花のゆかた/ダリとガラとピカソとブランコ|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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日常の向こう側ぼくの内側
更新日:2018年1月9日 / 新聞掲載日:2018年1月5日(第3221号)

谷崎と荷風と鏡花のゆかた/ダリとガラとピカソとブランコ

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2017.12.18
 昨日から描き始めた絵に取りかかろうとするが、何をしていいのかわからない。毎度のことだが、いつも初航海に航海図を持たないで出帆する気分だ。いつも計画なしで取りかかるので不安半分、期待半分。世阿弥の初心に戻る気分を味わうつもりが、80年のアカがついているので中々初心という具合にはなれない。迷宮化したキャンバスの前で気分転換に渡部昇一さんの『実践快老生活』を読むが、とうとう読了してしまった。

夕方から足治療。

2017.12.19
 冬至まであと4日。時間の底にどんどん落ちていく。

午後、朝日新聞の依田さんがペットボトル大2本の野菜ジュースを持って、ぶらりと。家がそう遠くないので時々現れる。

瀬戸内さんから☎で「細川護熙元総理に五輪塔を作ってもらったので、これを寂庵に置いてお墓を作りたいので、お墓のデザインをしてくれない?」。墓のデザインは柴田錬三郎さんに次いで二作目。アッ、違った、自分の墓を入れると三作目だ。

2017.12.20
 香取慎吾さんがアトリエにやって来る。3時間近くアレコレ話をしたり聴いたり。彼の話で面白かったのは、部屋に時々目の赤い黒いウサギが来るという。だけど絵を描き始めてからはピタッと来なくなった、と言って黒いウサギの絵を描いてくれた。芸能人にはこのような超自然現象を体験する人が結構多いんですよね。土屋嘉男さんはよく不思議な体験談をしてくれた。そんな土屋さんも超自然界へ旅立ってしまったけれど。

すっかり忘れていた「NY生活」紙の連載エッセイ。「元旦に載せたい、急遽送れ」のメールで、その場で書いて送る。

スウェーデンボルグのことを書いた直後、棚の上の彼の肖像写真が落ちてきて、足にぶつかって悲鳴を上げたが大事に至らなかった。何しろ相手は希代の霊能者だ。何のサイン?

2017.12.21
 郷里の童子山の中腹に家を建てたい願望がある。部屋の窓からは眼下に太平洋(見えるはずはない)。「ゆかたに着替えて下さい」と誰かに言われる。ゆかたは谷崎潤一郎、永井荷風、もうひとりは泉鏡花の三種がある。とりあえず永井荷風のゆかたを着る。勿論夢にきまっています。

昼、東宝スタジオの食堂で味噌ラーメンを食べたあと、山田洋次さんにポスターとタイトルバックのプレゼンテーション。しばらく振りで会う山田さんは昼食も摂れないほどの多忙。多忙はある意味で長寿の秘訣?

夕方まで絵の制作。ハカドリマヘンナー。

夕方、気分転換に整体院で、ひとに運動させてもらう。
旧山田家(成城四丁目)

2017.12.22
 ダリと郷里の幼稚園の運動場にあるブランコに乗る。ガラもいる。ピカソらしい人もいる。ぼくは夢の中では彼等と友人である。

今日は冬至で一年で昼が一番短い日だ。辺りが暗くなるとなんとなく仕事を終えたくなる。ヘタクソな絵でも描けば1点増える。もっと描けば2点、3点と増える。描かなきゃ絵は世の中に存在しないことになる。やはり画家としての運命を全うするためには描きまくるべきかも知れない。下手、上手いは自分や他人や世の中が決めるものではない。決めるのは「天」だと思う。

イッセイ・ミヤケの来秋冬のパリコレのインビテーションカードの打合せに宮前さんら3人。いつも「うさぎやのドラ焼」が手土産。各種ドラ焼を食べるが、やはりうさぎやが一番だ。だけどその一番も最近は飽きてきた。

今年もあと10日間。正月明けにインタビュー、対談、エッセイなどの依頼がバタバタと集中。

わが家の近くに昭和12年築の区指定有形文化財の西洋館があるが、最近一般に開放されていることを知って、今日初めて訪ねてみる。南画家の山田画家という人の旧家だそうだ。内部に喫茶室もある。コーヒーを飲みながら、買ったばかりの枡野俊明著『禅的考え方』を読む。書斎にぴったりの隠れ家を見つけた!

間もなく完成かと思った瞬間、このまま完成にしちゃいけないと内なる声。一気にバックを一色に塗りつぶして絵を一変させる。内なる野生によって狂気的快感を味わう。

2017.12.23
 冬至が終って今日から一日一日日が長くなっていく。思い切って早朝に起きて朝食を済ましてアトリエへ。

コルティの趣味の本専門の書店で『ハックルベリー・フィンの冒険1・2』を買って昨日の隠れ家でコーヒーを飲みながら読書。
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