閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済 / 水野 和夫 (集英社)資本主義の終焉に何ができるのか  「地域帝国」が「閉じた経済圏」を構築すること|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2018年1月7日 / 新聞掲載日:2018年1月5日(第3221号)

資本主義の終焉に何ができるのか 
「地域帝国」が「閉じた経済圏」を構築すること

閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済
著 者:水野 和夫
出版社:集英社
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一〇年国債の利回りが二パーセント以下という状態に日本が突入して、ちょうど二〇年がたちました。日本を筆頭に、他の先進国でも、多少の変動はありながら、超低金利状態が続いています。金利に私が注目するのは、長期金利が利潤率にほぼ一致するのが本来の姿であるはずなのに、21世紀に入って全く逆方向に動いているからです。

超低金利というのは、資本を投下しても利潤を得ることができない、という状況を意味します。資本の自己増殖が資本主義の本質だとすれば、我々は「資本主義の終焉」に直面しているのではないか――。そう記した前著『資本主義の終焉と歴史の危機』は、想像以上の反響で、経済誌では年間のベスト経済書に選定されたりもしました。

そして、自然と取材や講演会などで聞かれるようになったのが、「資本主義が終わるのならば、世界はどうなるのか、日本はどうすればよいのか」という問いでした。その問いに答えようと執筆したのが、本書です。

この問題を考えるにあたって、私の念頭にあったのは、世界はもはや無限ではない、有限の時代に入った、ということでした。

資本主義が大きく発展した時代には、無限の空間が存在するという前提のもと、「より遠く、より速く、より合理的に」を行動原理とする近代システムと手と手をあわせて、経済は動いてきました。

しかし、無限に貪欲な資本主義は一九七〇年を境に行き詰まり、資本主義の延命策として、「電子・金融空間」における金融化が進みましたが、その先に起こったことはゼロ金利とROE(株主資本利益率)の上昇、そしてテロリズムの“常態化”でした。

そもそも資本主義は、資源国や途上国の犠牲のもとでしか成立しない「欠陥商品」です。富を「中心」に「蒐集」した結果、「周辺」が犠牲になることへの異議申し立てが、アメリカでの9・11同時多発テロや近年の欧州でのテロなのです。

その悲鳴を無視して資本主義を延命させたせいで、テロリズムによって先進国の社会秩序は危機に瀕しています。秩序維持をうたう政府は民主国家を放棄し恐怖をあおって治安を維持するセキュリティー国家に変貌し始めました。これぞ、まさに近代システムの終焉です。

こうした歴史の危機については、もはや一国単位では、対応できません。リーマン・ショックに象徴されるようなグローバル資本の暴走にもテロリズムにも、ひとつひとつの国家は無力ですし、かといって権力が集中する強力な「世界帝国」では絶望の淵にある人々を見ようとしません。

だとしたら、現状の国民国家を超えた単位のシステムを構想していかなければなりません。それが本書で示した「地域帝国」というビジョンです。

近代が終わろうとする今、EUのような規模をもった地域帝国が「閉じた経済圏」を構築することが生存のためには必要です。

新しい時代にふさわしい社会システムの構築に向けて、日本は舵を切ることができるのか。私たちは危機の本質に立ち戻って考えなくてはなりません。
この記事の中でご紹介した本
閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済/集英社
閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済
著 者:水野 和夫
出版社:集英社
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