第70回 野間文芸賞 第39回 野間文芸新人賞 第55回 野間児童文芸賞 贈呈式開催|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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2018年1月12日

第70回 野間文芸賞 第39回 野間文芸新人賞 第55回 野間児童文芸賞 贈呈式開催

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右から、髙村氏、今村氏、高橋氏、山本氏
12月15日、東京都内で第70回野間文芸賞、第39回野間文芸新人賞、第55回野間児童文芸賞の贈呈式が開催され、野間賞の髙村薫氏(『土の記』新潮社)、新人賞の今村夏子氏(『星の子』朝日新聞出版)と高橋弘希氏(『日曜日の人々 サンデー・ピープル』講談社)、児童文芸賞の山本悦子氏(『神隠しの教室』童心社)の各氏に賞が贈られた。
土の記 上(髙村 薫)新潮社
土の記 上
髙村 薫
新潮社
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各選考委員代表の挨拶ののち、受賞者挨拶で髙村薫氏は「1990年の暮れに作家の一歩を踏み出して27年になります。当初はエンタテインメント小説を書いておりましたが、97年頃に勝手にエンタテインメントの列車から降りて純文学の列車に乗り換えてしまいました。切符も持たず、行き先も分からない無謀な飛び乗りで転落する危険も十分あったのに、無事今日を迎えていますので運だけは強いようですが、無賃乗車のキセルだという自覚はいつもどこかにあって、それが正当な小説作法に拘泥しない開き直りに繋がっているのかもしれません。小説らしさという発想を持たない私は、身体感覚と言語感覚だけを信じて、一行一行、高さや幅や厚みを眺めながら言葉のレンガを積み上げていくことしか出来ません。小説の一行一行は、その小説空間を生きる登場人物の呼吸の一つ一つ、移動する足の一歩一歩、流れる時間の一時一時であり、主人公の物思いのひとかけらひとかけらです。それらがどうにかこうにか繋がって『土の記』という小さな世界が立ち上がっていきました。特に何かが起こるわけでなくとも、生きることの喜びに満ち、生命が滴っているようなそんな世界を見たい。そう思ったのは、二度の大震災を経て作家自身がそのように変容したからだと思っています。しかもちょうどうまい具合に、そうした変容が比較的自然に感じられる年齢に差し掛かっていたことを思うと、私はやはり運の強い作家なのかもしれません。別の列車に乗り換えた乗客の私に、このような名誉な賞を与えてくださった方々と、これまで支えてくださったすべての皆さまに心から感謝を申し上げます」と謝意を述べた。

神隠しの教室(山本 悦子)童心社
神隠しの教室
山本 悦子
童心社
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山本悦子氏は「今までの私の作品は、どちらかというと明るく楽しくて元気というようなものがほとんどだったのですが、この作品はネグレクトやいじめ、虐待といった不安な要素がてんこ盛りで、子どもたちに受け入れてもらえるのかなと不安でした。最近子どもたちから直接感想をもらうことがあって、そこで子どもたちはすごく面白かった」「一気に読めたよ」と温かい言葉をくれました。子どもたちのほうが私よりももっと柔らかい土壌を持っていて、いろいろなものを受け入れてくれる。私は子どものことを信じきれていなかったなと気が付きました。この賞は本当に憧れの賞で、私などがもらえるはずもないとずっと思っていたので、天にも昇る気持ちとはこんなことかとも思いました。でも記者会見を終えて、翌日歴代の受賞者の方々のお名前をあらためて見た時に、こんなすごい方たちの中に私の名前を混ぜてよかったのだろうかと怖くなり、この賞を頂いたことの重みを感じました。昨年亡くなられた私の大好きな末吉暁子先生は、最後の最後まで作家として生きておられました。私も末吉先生を見習って最後まで作家として頑張って生きていきたいと、受賞を機会に心に決めました」と受賞の喜びを語った。

今村氏と高橋氏の新人賞の二人も、それぞれ短く簡潔ではあるが受賞の喜びと思いを述べ、式は終了した。
この記事の中でご紹介した本
土の記 上/新潮社
土の記 上
著 者:髙村 薫
出版社:新潮社
以下のオンライン書店でご購入できます
土の記 下/新潮社
土の記 下
著 者:髙村 薫
出版社:新潮社
以下のオンライン書店でご購入できます
星の子/朝日新聞出版
星の子
著 者:今村 夏子
出版社:朝日新聞出版
以下のオンライン書店でご購入できます
日曜日の人々(サンデー・ピープル)/講談社
日曜日の人々(サンデー・ピープル)
著 者:高橋 弘希
出版社:講談社
以下のオンライン書店でご購入できます
神隠しの教室/童心社
神隠しの教室
著 者:山本 悦子
出版社:童心社
以下のオンライン書店でご購入できます
2018年1月12日 新聞掲載(第3222号)
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