【横尾 忠則】充実した無為で無言の元旦 イイカゲンがいいんです。|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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日常の向こう側ぼくの内側
更新日:2018年1月16日 / 新聞掲載日:2018年1月12日(第3222号)

充実した無為で無言の元旦 イイカゲンがいいんです。

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2017.12.24
 わが家は神道と浄土真宗の神仏習合で、そこへ娘のクリスチャンが加わる。クリスマスイブは娘のための聖餐式で聖イグナチオ教会の聖歌隊へと。

2017.12.25
 早朝5時起床。ベッドの中で瀬戸内さんの『いのち』を読む。女性作家三人三様の業が渦巻く愛憎ものがたり。

フランス/ドイツ共同国営放送局ARTEの文化番組「Tracks」テレビ収録にマチュー・プリュネルさんがフランスの田舎の風景写真をお土産に。向こうにもいいY字路があるので、ぜひ海外版のY字路を描いてみたいもんだ。

年末年始のためにキャンバス大量に注文する。

2017.12.26
 新聞紙上に行方不明の消息者の記事が出ているが、こんな日常的な事柄をわざわざ夢にすることないだろう。

『トム・ソーヤーの冒険』と鈴木大拙の『禅仏教入門』を買って例の隠れ家旧山田邸へ。生涯読まないだろうと思う本を自宅と事務所とアトリエから大量に放出する。

夕方、スタッフと韓国料理李朝で暮年会。

2017.12.27
 gggの北沢さん来訪。来秋「幻花」の挿絵展の打診に。先の予定が決まる度に延命を約束された気分になる。

2017.12.28
 歌舞伎の女形を演じることになった。この大役を引き受けると同時に女形としての感性と身体性を生活の中で反映させなきゃと覚悟をするが、何んだか人生最大の危機に遭遇しているような気もする。目が覚めても無意識が顕在化してしまっている。

2017.12.29
 劇場の舞台の脇にテーブルを囲んだ数人で茶話会が始まろうとしている。知人の女浪曲師玉川奈々福さんが食料品を持ってくる。やゝ遅れて来た若い女性が「あたしはチョコがいいわ」とわがままをいうので「食べたきゃ自分で買って来い!」と叱る。椅子の上にカバンを置いて出て行った。もう一本の夢は郷里の西脇の中央を流れる杉原川に沿った道路を自転車に本を積み上げた若い女の子が本をボトボト落としながら走っている。

まだ外が暗いのに妻は正月の買出しに市場へ行く。夢ではない事実である。

夕方、帰宅すると玄関の前に門松に代って門竹が大量にウワーッとお化けみたいに飾ってある。

2017.12.30
 京都に終の棲家を探そうと妻と京都に行くことになった。小高い丘の上から見える京都はまるで長崎のようで海に小さい船が並んでいて南蛮画のようだ。移住を機会に誰か絵の師匠を探して弟子入りしたいと思う。夢ですけどね。

夜、今年最後のマッサージに。

2017.12.31
 蓮の花こそないが泥の沼に裸の男が数人こっちを向いて頭だけを水面から出している。全員が仏像の仮面をつけている。こーいう夢は初夢にとっておきたかったよなあ。

大晦日から入筆して元旦に脱筆すると2年がかりの絵になる。

大晦日のテレビは芸能一色。テレビを切って森鴎外の「寒山拾得」を読む。何度も読んでいるが、ここには小説の秘密があると三島さんが言っていたが、絵だって同じだ。まあ、アホになる修行ってわけさ。

柄谷行人さんと朝日新聞社にて (撮影・徳永明美)
2018.1.1
 娘の美美と香港経由でサンフランシスコに行く夢。もう一本は元旦の朝日新聞に柄谷行人さんとの対談が出ている夢。それを読んだという夢を見た人がいるに違いない。

お屠蘇で酔っぱらって邪気を払う。昼はコンビニのお好み焼き。

夕方、近くの喜多見不動堂へ初詣。辺りが暗くなりかけているのに行列ができる。事務所のパソコとツートンに新年のご挨拶を。まあ実に充実した無為で無言の元旦でありました。

2018.1.2
 カルティエ現代美術財団から追加依頼されているアーティストの肖像画を描く。クリスチャン・ボルタンスキーとブルース・ニューマンの二人。

2018.1.3
 今年最初の足もみ。中田先生は言う。「白黒ハッキリつけたがる人は認知症になりますよ。イイカゲンがいいんです」。加えたり、減らしたりの加減のいい生き方がいいんだ。

昼食はタコ焼を買ってアトリエで。

2018.1.4
 午前中アトリエで肖像画1点完成。

旧山田邸でタイ焼とコーヒーを飲みながら年賀状を書く。

夕方まで肖像画3点描く計5点、明日1点描けば完成。

2018.1.5
 インフルエンザの予防注射に玉川病院へ。効果は2週間後だという。中嶋元院長とうなぎ屋へ。冬場のうなぎは冬眠中なのか、食べても元気が出ず。もうひとつ。

午後肖像画三昧。

2018.1.6
 アトリエの玄関のドアにシールをペタペタ貼るなんてことない夢。

2018.1.7
 長い廊下のような機内にポツンポツンと座席がある。他に丸椅子も所々に。乗客は二、三人。手にした切符を小さく丸めてしまったので機首の先端に座っているパイロットに「預かって下さい」と手渡す。この夢を絵にすればシュルレアリズムだ。

久し振りに山田洋次さんとうどんとぜんざい。脚本家の橋本忍さんは百歳。帰路『ピーター・パンとウェンディ』を買う。大人になりたくない症候群の希望の書である。
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