連 載 横断する作家/空間性と観念/グリフィス ジャン・ドゥーシェ氏に聞く39|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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ジャン・ドゥーシェ氏に聞く「映画/映画作家/映画批評」
更新日:2018年1月16日 / 新聞掲載日:2018年1月12日(第3222号)

連 載 横断する作家/空間性と観念/グリフィス ジャン・ドゥーシェ氏に聞く39

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シネマ・ドゥ・パンテオンにて(2016年)
HK 
 ドゥーシェさんは、グリフィスが映画の始まりであると普段からおっしゃっています。そのことに関しての小話があります。以前、ユダヤ人銀行家アルベール・カーンのカメラマンをしていたアルフレッド・デュテルトルについて調べたことがあります。1908年、アルベール・カーンに付き添って、アメリカを経由して、撮影のために日本を訪れました。その映像を見ていて非常に興味深いことがありました。その映像を見ていて非常に興味深いことがありました。彼はリュミエール兄弟の映像やジェームズ・ウィリアムソン(『中国における伝道会襲撃』〔1900年〕は初の切り返し映画とされている)などは全く知らなかったみたいなのですが、彼の旅を追いかけるようにして見てみると、トラヴェリング、パノラマ撮影、切り返しのような技術を試行錯誤しながら作り出して行きます。その過程が非常に面白い。ドゥーシェさんは、この最初期の映画を映画として取り扱うことはあまりありませんね。
JD 
 いずれの場合にせよ、その種の技術は様々な人によって、映画史の非常に早い段階で生み出されています。そうした多くの技術が発明されたのは事実ですけれども、問題となるのは、いかにして技術を使うかということです。映画の言語の使用法がわかるまでには、少なからず時間が必要でした。つまり、ひとつの発明から映画特有の表現をどう獲得するか、ということです。そのような考え方も、歴史の早い段階から存在していました。しかし、技術が一種の筆跡のようなかたち(=エクリチュール)を得て使用されるまでには20年近く、場合によっては30年近くの時を要しました。
HK 
 そのような意味で、「必ずしも全てではないが、映画の言語はグリフィスとともに生まれた」と常日頃からおっしゃっているのですね。
JD 
 その通りです。グリフィスが映画の言語に意味を与えたというのは事実です。しかし、後々映像言語となるものは発明されていました。1896年、つまり映画の誕生の翌年に、すでにトラヴェリングの技術は生み出されています。リュミエール兄弟のカメラマンの一人であるアレクサンドル・プロミオがヴェニスの街を、撮影のため訪れます。彼はゴンドラの上から街を撮影しようとしますが、その際に偶然にもカメラは横へと動きます。何かの効果を狙ったわけではなく、そのような横への動きは、ゴンドラによって強制されていました。問題となるのは、いかにしてこのトラヴェリングという技術を用いるのかということです。アクションを生み出すためのトラヴェリングの使用法が問題でした。そうした使用法は、実際にグリフィスの手によって生み出されています。1900年から映画は準備されていたと言えます。しかしながら、それに連なる発明が必要でした。
HK 
 歴史を通じて様々な表現法が獲得されてきました。今日の映画作家もそうした映画言語の歴史に連なっていると思いますか。
JD 
 彼らも映画言語の歴史の流れの中にはいます。しかし、現代的なテクニックしか残っていません。
HK 
 現代的なテクニックという点では、確かにその通りだと思います。例えば、ソヴィエト映画などを見ていると、今でも多くの可能性が残されていると思います。今日でも、何かしら試せるようなものがあるのではないでしょうか。
JD 
 ソヴィエト映画には多くの可能性が残されています。しかし、いずれにせよ、ソヴィエト映画はすでに忘れられ、今日の世界から離れたところへと行ってしまいました。それでもゴダールは、ソヴィエト映画について考えています。
HK 
 ゴダールだけですか。
JD 
 目に見える形では、ゴダールだけです。しかし他の作家たちも、どこかしら影響を受けているところがあります。例えば、モンタージュのつなぎを考えた際に、前の映像と対立するような映像がくるのであれば、それはソヴィエト映画の影響を受けています。様々なところで、使用されているはずです。フリッツ・ラングでさえ、長年にわたってそのようなモンタージュを使い続けていました。この点については少し複雑です。というのも、ラングがソヴィエト映画に与えた影響も確かにあり、二つが絡み合っているからです。

<次号へつづく>

〔聞き手・写真=久保宏樹〕
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