佐伯紺「あしたのこと」(2014) 寝た者から順に明日を配るから各自わくわくしておくように|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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現代短歌むしめがね
更新日:2018年1月23日 / 新聞掲載日:2018年1月19日(第3223号)

寝た者から順に明日を配るから各自わくわくしておくように
佐伯紺「あしたのこと」(2014)

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「各自~しておくように」という決まり文句は、学校で配布されるプリントでおなじみのものだ。各自用意しておくように、各自準備しておくように。そんなふうに未来に向けてのある種の強制を働かせる、権力的な言葉。

しかしこの歌ではその権力構造をひねって、「わくわくしておくように」と来た。喜ばしい感情をここに配置するだけで、かびの生えた決まり文句がこんなに新鮮に見えるとは。言っていることは要するに「みんな眠れば明日が来る」というだけのことなのだが、「明日を配る」と言われるだけで大きな神様のような存在が、眠りについている一人ひとりの枕元に何かを置いてゆく、そんな情景が思い浮かぶ。考えてみるとそのイメージは、クリスマスの夜にプレゼントを配り歩くサンタクロースそのものなのだった。この歌の着想元にも、サンタクロースのイメージが大きく寄与しているような気がする。

クリスマス前日もそうだったけれど、子どもの頃は明日が来ることが待ち遠しくて心からわくわくしながら眠りにつく夜がいっぱいあった。いつからか、明日なんて来なくていい、このまま永遠に眠り続けたいと思いながら横になる夜が増えてしまったような気がする。明日は来るのではなく、配られる。ゲームを楽しむための大事なカードかもしれない。明日への「わくわく」に満ちていた頃の気持ちを、ふっと思い出させてくれるような一首である。(やまだ・わたる=歌人)
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