ナミヤ雑貨店の奇蹟 書評|東野 圭吾(KADOKAWA)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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2018年1月20日

『ナミヤ雑貨店の奇蹟』 東野 圭吾著
甲南大学 中西 聖也

ナミヤ雑貨店の奇蹟
著 者:東野 圭吾
出版社:KADOKAWA
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ナミヤ雑貨店の奇蹟(東野 圭吾)KADOKAWA
ナミヤ雑貨店の奇蹟
東野 圭吾
KADOKAWA
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人生は選択の連続だ。そしてその選択の中で悩みが生まれる。私も大きな選択を迫られていた。「どの会社に就職するか」。就活生であれば誰もが抱える悩みだろう。悩みと向き合う中で、一つの本に出会った。あらすじに「悩み相談」の文字を見つけ、もしかしたら今の自分に役に立つかもしれないと感じた。それが本書『ナミヤ雑貨店の奇蹟』である。しかし、話の内容は一筋縄ではいかなかった。

ナミヤ雑貨店の店長ナミヤさんは、本業の傍らで人々の悩み相談を請け負っている。悩みを手紙に書き、夜に店のシャッターに投函する。すると次の日には、返事の手紙が店の牛乳箱に入っているのだ。なぜ手紙なのか。それはこの悩み相談が1970年代に行われていたからだ。しかし本書での悩み相談は、ナミヤ雑貨店が閉店してから40年後が舞台。時空を超えて過去の人々の相談を3人の男の子達が請け負うことになる。この3人は窃盗を働き、空き家となった雑貨店に身を隠すことにした。すると誰も居ないはずなのに、シャッターに手紙が投函されてきた。この手紙はいったい何なのか。3人は雑貨店が悩み相談をしていたことを知り、その真似事をしていく中で過去の人とやりとりをしていることに気付く。

3人は相談者に対して現実的なアドバイスをしていくのだが、相手は思うようには納得しない。あまりに上手くいかないので、「わけわかんねぇ。何なんだよ、こいつ。こっちのいうことをきかないなら、最初から相談なんてすんなよ」と言い出す始末。正直ごもっともな意見だと思った。でも、もし自分が相談して「こうした方が良い」と言われても、すんなり受け入れられないだろうなとも考えた。

ナミヤさんはどんな気持ちで悩み相談を受けていたのだろうか。本書には「多くの場合、相談者は答えを決めている。相談するのは、それが正しいってことを確認したいからだ。」というナミヤさんの言葉があった。確かにそうだなと思った。決断する自信がない、勇気が出ない、そんな時どうしても誰かに背中を押してほしくなる。「大丈夫、間違ってないよ」と言ってほしくなる。自分もこういったものを求めて、本書に手を伸ばしたのかもしれない。

理想と現実のギャップに苦しむ人。これでいいのかと迷う人。この本には自分と同じように悩みに苦しむ人々の姿が描かれていた。しかし、どの人も自分に正直に生きたいと思っていた。そして悩みぬいて自分で出した結論に満足しているように思えた。どんな悩みでも結局最後に決めるのは自分なのだ。「何が正しいか」ではなく、「自分がどうしたいか」。誰かに言われて決めるのではなく、自分で決める。きっとそれが人生において大事なことなのだろうと、私にはそう思えた。

もしあなたが悩みを抱えた時、この本のことを思い出してほしい。あなたの悩みに対して答えはくれないし、自信もつけてはくれないだろう。でもきっとあなたに悩みとの向き合い方を教えてくれるはずだ。ただ悩んでばかりでは苦しい。気分転換にこの本を読んで、私と同じようにあなただけの答えを見つけてほしい。
この記事の中でご紹介した本
ナミヤ雑貨店の奇蹟/KADOKAWA
ナミヤ雑貨店の奇蹟
著 者:東野 圭吾
出版社:KADOKAWA
以下のオンライン書店でご購入できます
2018年1月19日 新聞掲載(第3223号)
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