男女平等は進化したか 男女共同参画基本計画の策定、施策の監視から 書評|鹿嶋 敬(新曜社)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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2018年1月27日

ジェンダー平等に向けて 
「男女共同参画」が目指すもの

男女平等は進化したか 男女共同参画基本計画の策定、施策の監視から
著 者:鹿嶋 敬
出版社:新曜社
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「男女共同参画基本計画」をご存知だろうか。「男女共同参画社会基本法」が国や都道府県に策定を義務づけている「男女共同参画社会の形成の促進」のための計画である。期間を10年とし、5年ごとに改定されるが、現行計画はすでに第4次(2015年閣議決定)である。本書は、その全てについて有識者として関わった著者が、その任を離れてから約1年後に刊行した報告である。

1999年に制定された男女共同参画社会基本法は、「自社さ連立政権」のもとで準備された。連立解消後、小渕政権でこの法律は制定され、計画も策定された。しかし、この新しいしくみがスタートした後、男女共同参画政策は、「バックラッシュ」に見舞われることになった。自民党は、党を挙げて「ジェンダーフリーバッシング」に邁進、2次計画は、そのターゲットとなった。一転して3次計画は民主党政権下での策定となり、関係者は大いに期待したが、2012年12月に再び政権交代、バッシングの中心にいた人物が再び政権を担ったのである。男女共同参画政策はまたも危機的状態に陥るかと思われたが、「女性活躍推進」が重要政策として掲げられるという予想外の展開をみせている。

著者は、「政権がどう変わろうと、男女共同参画は生き延びなければならない」と自らに言い聞かせていたという。そのような著者は、こうした曲折にどう対応したのか、その打ち明け話を期待する向きには、物足りないと感じられるかもしれない。何より、男女共同参画会議に置かれた専門調査会で策定する計画案は、政府に提出後は委員は関与できないのであり、どれほど計画に反映されるかは保証の限りではない(実際、4次計画でも、驚くような内容の変更があった)。さらに言えば、書かれた計画がどれほど実行されるかも、定かではない。有識者としてなしうることには限りがあるのだ。そういう限界を知りながら、また、ジェンダーギャップ指数ランキング114位(2017年)という事実を前にしながら、「日本社会の男女平等は進んだか」という問題に答えようとする本書が伝えていることは何だろう。

それは、日本の行政に埋め込まれた貴重なしくみを、有効に作動させようとする努力である。例えば、3次計画策定時、男女共同参画会議の中で、政治家への挑発的な発言によって「もっとエッジを効かせろ」という返答を引き出したこと、またあるいは、4次計画の中に、「リプロダクティブ・ヘルス/ライツの視点が殊に重要である」と書き込むことができたこと、さらには、「男性中心型労働慣行の変革」を「目指すべき社会」の中に盛り込んだこと、総理大臣が「成長戦略」だと強調した「女性活躍推進」と人権施策、社会政策である「男女共同参画」を関連づけたこと(女性活躍推進はプロセス、男女共同参画社会がゴール)。また著者は、任期の終わりに出席した男女共同参画会議の席上、長らく所属し、会長も務めてきた「監視専門調査会」の廃止に異議を唱え、復活を要請したが、これは、有識者議員としての最後の努力であった。

著者は、本書の記述を、敢えて、ほぼ、公開されている議事録や会議資料の範囲内に収めた。そして、このような早期に出版した。そのことじたい、著者からのメッセージと捉えたい。それをどのように生かせるか、後に続く者たちは、試されている。日本社会のジェンダー平等を先に進めたいと願う多くの人に読まれてほしい。
この記事の中でご紹介した本
男女平等は進化したか    男女共同参画基本計画の策定、施策の監視から/新曜社
男女平等は進化したか 男女共同参画基本計画の策定、施策の監視から
著 者:鹿嶋 敬
出版社:新曜社
以下のオンライン書店でご購入できます
2018年1月26日 新聞掲載(第3224号)
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