岡野大嗣『玄関の覗き穴から差してくる光のように生まれたはずだ』(2017) 未来が僕を問いつめる警察のシャツの色した空の真下で|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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現代短歌むしめがね
更新日:2018年2月13日 / 新聞掲載日:2018年2月9日(第3226号)

未来が僕を問いつめる警察のシャツの色した空の真下で
岡野大嗣『玄関の覗き穴から差してくる光のように生まれたはずだ』(2017)

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木下龍也と岡野大嗣の合同歌集からの一首。二人のうちどちらが作った歌なのかは帯でのみ告知されており、外してしまうとわからないようになっている。帯の情報に従えば、これは岡野大嗣の歌。

言うまでもなくザ・ブルーハーツ『青空』(真島昌利作詞)の「こんなはずじゃなかっただろ/歴史が僕を問いつめる/まぶしいほど青い空の真下で」という一節のパロディである。元ネタの印象がきわめて強いだけに、パロディも真っ向勝負だ。

『青空』で問いつめてきたものは「歴史」であるが、こちらは「未来」だ。しかもただの青空ではない。「警察のシャツの色」の空だ。やっぱり青であることには変わりないのだが、こう表現するだけできつく問いつめてくる警察官の姿を空の向こう側に幻視してしまう。取調室の刑事ではなく制服警官ということは、職務質問に引っかかったのか。

オリジナルの色名を作り出すというのは短歌ではよくみられるが、本来ないはずのものを実体化させてしまう魔法が造語にはある。この歌が生まれた前後では、抜けるような青空はもう「警察のシャツの色」としてしか認識できなくなる。初句から二句にかけて「みらいがぼ・くをといつめる」というトリッキーな句またがりが用いられているのも、問いつめられてどもり気味になっている「僕」のイメージを想起させてくれる。

人種差別への批判を込めた元ネタの力を借りて、この歌もまた強烈な社会風刺が見え隠れしているようだ。
この記事の中でご紹介した本
『玄関の覗き穴から差してくる光のように生まれたはずだ』 /ナナロク社
『玄関の覗き穴から差してくる光のように生まれたはずだ』
著 者:岡野 大嗣、木下 龍也
出版社:ナナロク社
以下のオンライン書店でご購入できます
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