八重山暮らし(29)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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八重山暮らし
更新日:2018年2月20日 / 新聞掲載日:2018年2月16日(第3227号)

八重山暮らし(29)

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海晒しは潮の干満差の少ない小潮の日が選ばれる。石垣島川平にて。
(撮影=大森一也)
海晒し


かつては哀しみも織り込めていたのかもしれぬ…。

清水のように澄んだ海。陽を浴びてたゆたう美しい布を飽くことなく見つめる。いのちを削るようにして布作りに挑む…。地機に座すおんなたちの呻きが、ふいに聞こえてきた。

琉球王朝時代、島人に貢納布として課せられた八重山上布。王家などが身に着ける特別な布は「グイフ(御用布)」と呼ばれ、村役人の厳しい指導と検査の下で製織が為された。一反を織り上げたおんなはやつれて髪の毛も抜けるほどであった、という。過酷な税制度によって、皮肉にもその手技が磨かれることになる。

布の上を水が流れ、鳥は両の羽を広げ、蛍が瞬く。八重山上布には、島の自然や日常の用具を象る絣がちりばめられている。

暮らしのたつきとして織物にいそしむ日々。晴れ渡る空のもとで行う海晒しは、織り手にとってまさに悦びの日となる。海で晒された上布は、地色の白がいっそう白くなる。目にも眩い白砂とひとつに溶け合うように。清らかな海は、布に摺り込まれたクールという植物染料の色を定着させる。八重山独特の技法だ。

浜辺のモンパノキの木陰からさざめきが響く。苧麻を竹管に巻くおんなたちの声は、小鳥のようにかまびすしい。家庭の雑事から解き放たれ、屈託のない笑顔がまたひとつ弾けた。
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