現代文解釋法 書評|塚本 哲三(論創社)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2018年2月17日 / 新聞掲載日:2018年2月16日(第3227号)

現代文解釋法 書評
旧制高校の受験参考書の復刻 
受験者はどのように学んでいたのかを知る貴重な資料

現代文解釋法
著 者:塚本 哲三
解説者:佐藤 裕亮
出版社:論創社
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今はまさに受験シーズン。希望する大学を目指し、受験参考書が手放せない日々を送っている受験生も多いことだろう。本書『現代文解釋法』は、こうした受験生の「現代文」の受験参考書である。いや正確には「受験参考書だった」と言わなければならない。

本書は友朋堂より一九二五年一月に初版、一九三一年二月に新訂版、一九三八年四月に更訂版が刊行されて、一九四一年三月刊行の『現代文解釋法』第二三六版を底本とした復刻本である。旧制高校がどのような「現代文」をどのように出題し、受験者はどのように学ばなければならなかったのかを知る貴重な資料と言える。また版数の多さからは戦前の受験生たちが、本書を有益な受験参考書と評価していたことが窺える。

巻末の「入試問題校別索引」には「第六高等學校」「横濱専門學校」「京城帝國大學豫科」「津田英學塾」など五九の校名が挙げられ、これらの学校が出題した一七八問を含む三七〇問とその模範解答が著者の塚本哲三によって示されている。また「作者別索引」には森鴎外、樋口一葉、夏目漱石、石川啄木、若山牧水、和辻哲郎、西田幾太郎等々、九九人の多彩な顔ぶれが並んでいる。

塚本哲三は国語漢文の中学校教師だった人で、受験参考書の必要性を実感し、学習参考書や辞書を刊行していた友朋堂との関わりから、多くの受験参考書を手がけた。

当時、本書の利用者は「上級学校」を目指した中学生たちで、この「上級学校」には三~四年制の高等学校、専門学校、実業専門学校とがあった(最上級校が三年制の大学)。文科省の『学制百年史』(一九八一年)によれば、一九三六年に大学生は七二一九五人、高等学校生・専門学校生合わせて一一五〇九七人だった。一九三〇年代の「上級学校」への競争倍率は六倍ほどで、本書には何を正答とするのか、著者の塚本が迷いの言葉を吐露した箇所も見られ、かなり高度な問題が多かった。

したがって塚本が受験生に求めたのは、通読から精読へという道筋であり、問題文に「読方」「通解」「考察」を示してから解答へと繋げたのはそのためだった。記述式がほとんどだった「上級学校」の「現代文」入試問題では、より的確に文意を読み取り、理解しなければならず、塚本の教授法は正鵠を射ていたと言えるだろう。現在の大学の国語入試問題では選択式解答が多く、記述式が極端に少ない傾向とはあまりにも対照的である。

どうやら本書は、戦前の「現代文」受験参考書がどのような内容であったのかを知ることができる資料というだけでなく、見逃してならないのは近年、大学生の思考力、判断力、表現力の著しい低下が問題視され始めてきており、それを食い止める重要な手がかりを教えてくれる木鐸の書にもなっていることだろう。
この記事の中でご紹介した本
現代文解釋法 /論創社
現代文解釋法
著 者:塚本 哲三
解説者:佐藤 裕亮
出版社:論創社
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