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更新日:2016年9月23日 / 新聞掲載日:2016年9月23日(第3157号)

一日一○○通の読者ハガキ、雑誌『暮しの手帖』 暮しの手帖社 (下)

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暮しの手帖社の歴史は、戦後まもない一九四六年三月、大橋鎭子と花森安治のコンビで創業した衣裳研究所(暮しの手帖社の前身)から始まった。同年六月、服飾の提案雑誌『スタイルブック』を出版。一九四八年九月、健康をささえる「食」と、家庭を守る「住」を取り入れ、『美しい暮しの手帖』(のちに『暮しの手帖』と誌名を変更)を創刊する。

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9月5日、池袋・ジュンク堂で開催されたトークイベント<暮しの手帖のつくりかた>第2回「花森さんってどんな人?」の様子。『暮しの手帖』編集長の澤田康彦氏(左)と編集部OBの小博雅章氏<

現在の同社では、隔月刊の本誌『暮しの手帖』(年間六冊発行/編集長は澤田康彦氏。二〇一六年(八〇号)から現職)を主軸に、別冊『暮しの手帖』(二〇一六年は八月までに三点刊行)やベストセラーのエッセイ集『すてきなあなたに』をはじめとする単行本を年一、二点刊行している。

創刊以来、雑誌『暮しの手帖』の発行を支える読者だが、現在、同社の把握する定期購読は約二万部あるという。

「定期購読の中でも、特徴的なのがどなたかにプレゼントされる定期購読が多いことです。これは、創業者の花森安治が読者に、『暮しの手帖』の定期購読を“贈りもの”として提案したことに端を発しています。(久我)」

現在同社が直接行っている定期購読料は、一年分(六冊/国内宛/荷造り・送料込)で六四五六円。定期購読者には、特典として「暮しの手帖オリジナルふきん」がプレゼントされるが、雑誌本体の割引はしていないという(割引になるのは、毎年夏に行われる、日本雑誌協会の雑誌愛読月刊の書店店頭キャンペーン時のみ)。

「読者ハガキが通常でも毎号三〇〇~四〇〇通は届くのですが、ドラマ放送後からは、一日で一〇〇通くらい届くようになりました。もともと、雑誌が始まった当初から、読者ハガキを通して双方向的な交流があって、読者ハガキで問い合わせてきた読者の疑問に答えるとか、そういった伝統があったんですね。読者の中には、「一冊の雑誌を二ヶ月かけて読んでいます」という人もいて、それはやはり、読者が本当に求めているものに応えてきたからだと思うんです。だから、雑誌を隅から隅まで読んでくれる。また、創刊号から今までの全てを保存してあるという読者も多いようです。いまでも編集方針の「実証主義」は徹底していて、例えば料理の記事など、料理研究家の先生に作ってもらって記事にして、その記事を見ながら編集部で実際に料理を作り試食会を開くんです。誰でも必ずおいしく作れるか、味はどうか、レシピの分量や表現は適切か等々を試作を繰り返して修正し、ようやく掲載する。洋服の作り方にしても同様で、毎号丁寧に時間をかけて、記事を作っています。(久我)」

現在、暮しの手帖社の社員は三〇名。そのうち十三名が編集に従事している。一誌の編集に関わる「社員」の比率の高いことに驚かされる。男女構成比は一:三(編集部:男性三名)、平均年齢は四二歳で、福利厚生も整い、女性が働きやすい職場環境というのは、この社らしいと言えよう。現在も育休中や時短制度の利用者もいれば、産休・育休から復帰したばかりの女性も活躍しているそうである。最後に、同社の今後の課題を聞いてみた。

「ドラマの放送はあと一ヶ月で終了しますが、最新号二七万部の読者をどう繋ぎとめていくかが最大の課題ですね。ウェブやデータベースの構築など、システムの整備を進めるのも喫緊の課題です。

これだけ届く読者ハガキを活用して、もっと記事や企画に反映していくことも考えていますが、本誌表二にある、花森安治のことば通り、“こころの底ふかく沈んで/いつか/あなたの暮し方を変えてしまう”、そういう雑誌を作り続けていくことが使命だと感じています(久我)」

『暮しの手帖』の号数は独特の数え方になっていて、初代編集長・花森安治の理念で「一〇〇号ごとに初心に立ち返る」という意味から、一〇〇号ごとに第○世紀○○号と数えているという(最新号は、九月二四日発売『暮しの手帖』第四世紀八四号※取材後、三○万部の発行が決定した)。“雑誌だけれど雑誌ではない”心に届く雑誌。あと数年で、『暮しの手帖』は第五世紀を迎えるが、これまでと変わらず、読み継がれていく。
この記事の中でご紹介した本
花森さん、しずこさん、そして暮しの手帖編集/暮しの手帖社
花森さん、しずこさん、そして暮しの手帖編集
著 者:小榑 雅章
出版社:暮しの手帖社
以下のオンライン書店でご購入できます
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