『装丁、あれこれ』(彩流社)刊行記念  桂川潤×加藤典洋トークイベント レポート|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2018年2月26日 / 新聞掲載日:2018年2月23日(第3228号)

『装丁、あれこれ』(彩流社)刊行記念 
桂川潤×加藤典洋トークイベント レポート

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装丁、あれこれ(桂川 潤)彩流社
装丁、あれこれ
桂川 潤
彩流社
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二月二日、東京新宿のブックファースト新宿店で、『装丁、あれこれ』(彩流社)の刊行を記念し、著者で装丁家の桂川潤氏と、文芸評論家の加藤典洋氏によるトークイベントが行われた。その一部をレポートする。
第1回
装丁の輝く時代

桂川 潤氏
『出版ニュース』の連載コラム「装丁」(二〇一二年~二〇一七年分)をまとめた本書について、最初に加藤氏が感想を述べた。
「非常に面白かった。二〇一〇年にiPadが出現し、黒船が到来したかの衝撃の中で、紙の本に関わる人たちが、精神的に自分の仕事について考えなくてはならない、という局面が生まれました。その中で、いろいろな人が考えたこと、言葉や作られた本などを、桂川さんがコラムのかたちで記録に留めている。

天野祐吉さんが一九七九年に創刊した『広告批評』という雑誌がありますが、それまで誰も広告が批評になると思っていなかった。それはマスコミやメディアの在り方が大きく変わる時期で、広告の意味も変わり、広告に関わる人たちが社会の前面に押し出され、物を考えざるを得なくなりました。だから当時のコピーライターは輝いていて、その言葉はインパクトを持って響いた。でも今は、安倍内閣が“~革命”などのコンセプトを次々出すけれど、言葉が変わっても実質は変わらない。言葉の力がすり減っている。

代わりに現在は、装丁が輝いているんです。そして装丁家の言葉もまた輝いている」。続けて本書から、戸田ツトム氏が水墨山水画などのハーフトーンについて語った「充実ではなく希薄へ、増殖をともなう運動ではなく静止に向かう衰退へ、消え入りそうな、そして弱さへ」と、それについての桂川氏の「「衰退」は、けっして「無」への収斂ではない。あらたな「生」を用意するプロセスなのだ」という言葉を、「ジョルジョ・アガンベンの言葉と言われても不思議ではない。装丁が人にいったい何を考えさせるのか。装丁の世界は今、磁気を帯びて輝き、砂鉄のようなものが粒立って、歩いたらギシギシと音がするような現場になっている。そういう時期の貴重な、ものを考える現場を捉えて、このコラムは書かれている」と話した。

桂川氏は、このコラムを、装丁家の作家論であり、ブックレビュー、あるいは本に関わる人々についてのレビューとして書いたこと。小さな本だが索引を付けたのは、人物名や書名、事項を追いながら、クロニクルを眺める構成にしたかったから、と説明した。「時代の流れの中でブックデザインを見、装丁が単なるデザインではなく、時代の証言であることを印象付けたいという気持ちがありました」

さらに、「もともと装丁は、本を保護して、本に寄り添い、その内面的な世界を表わすものでしたが、その役割がガラッと変わったのは、デザイナーが本の世界に入ってきたことがきっかけでした。一人はもともと建築デザインが専門だった杉浦康平さん。杉浦さんは高度成長期の建築デザインに対して否定的で、莫大な金を投じ、巨大なクライアントの下で作るものは、政治力でしかないと。杉浦さんは、本を自分の理想の建築物として、作り上げたのだと思うんです。それは聖書がキリスト教の精神的伽藍となったように。対して広告界からいらした菊地信義さんは、それまでなかった“批評としての装丁”を手がけます。当初は装丁家が出しゃばるな、という批判も強かった。でも菊地さんをはじめとするブックデザイナーたちが、装丁をテクストに寄り添うものから、批評としての装丁、独自の表現物へと深化させました」。

加藤氏は、「装丁家が表に出て来た時期は八〇年代半ばぐらいで、僕が書かせてもらうようになった時期と重なっています。僕は装丁を大事にしているし、こだわりもある。時代の影響を受けて、装丁家の批評から生み出される物語に喜びを感じたり、時には期待を越えてもらえなくて、がっかりすることもありました」

桂川氏は「“批評=review”とは、re=もう一度、view=見ること。著者や編集者は作品にピッタリくっついているので、改めて見ることがなかなか難しい。装丁は、視覚的、物質的に、別の角度から作品の内容を立てていくという作業です」  
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この記事の中でご紹介した本
装丁、あれこれ/彩流社
装丁、あれこれ
著 者:桂川 潤
出版社:彩流社
以下のオンライン書店でご購入できます
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