枡野浩一『ますの。』(1999) 「おもしろい原稿です」とノタマって「ただ……」と続ける長々し尾よ|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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現代短歌むしめがね
更新日:2018年2月27日 / 新聞掲載日:2018年2月23日(第3228号)

「おもしろい原稿です」とノタマって「ただ……」と続ける長々し尾よ
枡野浩一『ますの。』(1999)

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ますの。(枡野 浩一)実業之日本社
ますの。
枡野 浩一
実業之日本社
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小倉百人一首にもとられている柿本人麻呂の和歌「あしひきの山どりの尾のしだり尾のながながし夜をひとりかも寝む」をパロディ的に使った一首である。フリーライターの職業詠といえる歌で、自分の原稿を一読していったんは褒めた後に「ここをこうした方がいいと思うんですよね」と延々と問題点を指摘してゆく編集者の姿が戯画的に描かれている。「ノタマって」というカタカナ混じりの表記も、90年代の「ギョーカイ」的軽さを皮肉っている。パロディ元となった人麻呂の歌も、「長い夜をひとりで寝ている」という簡単なことを言いたいがためだけに枕詞に序詞と本題とは直接関係のないものをそれこそ「ながなが」と連ねている歌だ。余計なことを長々としゃべる「ギョーカイ人」の面倒くささと、余計な修飾を延々とつけて肝心の本題は大したことを言わない思わせぶりを良しとしてしまうような和歌の美学を、たった一首で同時に茶化してみせるスーパープレイである。

百人一首をパロディ化した現代短歌は少なくないが、ここまで喧嘩を売っているようなパロディは珍しくていささか痛快である。「言いたいことあんならはっきり言えよ!」というメッセージが、目の前にいる現代の編集者と、はるか古代の歌人両方に同時にぶつけられている。直接言わずに余計な飾りで迂回させまくって伝えるのがスマートで美しい方法だと考えてしまうのは、古来から続く日本人の厄介なクセなのかもしれない。(やまだ・わたる=歌人)
この記事の中でご紹介した本
ますの。/実業之日本社
ますの。
著 者:枡野 浩一
出版社:実業之日本社
以下のオンライン書店でご購入できます
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