暗闇から手をのばせ Reach out and Touch Faith / 小野 啓(SilverBooks)暗闇から手をのばせ 小野 啓 著|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2018年2月27日 / 新聞掲載日:2018年2月23日(第3228号)

暗闇から手をのばせ 小野 啓 著

暗闇から手をのばせ Reach out and Touch Faith
著 者:小野 啓
出版社:SilverBooks
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高校生のポートレート作品をもう15年ほど撮り続けているのだが、その作品の流れから依頼があり、ある地下アイドルグループの肖像写真を撮ることになった。そのグループはBELLRING少女ハート(ベルハー)という。

はじめは一度きりの撮影だと思っていたが、参考程度に軽い気持ちで訪れた地下アイドルの現場には、言葉にならないほどの驚きがあった。命を削るようなメンバーと、オタクが熱狂するフロアとの交錯。ここには得体の知れないエネルギーが渦巻いていた。

とにかく今この現場を撮らなければならない。写真家としての直感に身をまかせ、運営に頼み、まずは撮影にこぎつけた。発表のあてなどなく、作品になるのかも分からないまま、行けるかぎり現場に赴いてシャッターを切った。そして結果的にグループが崩壊するまでの2年半の間、ベルハーのドキュメンタリーを撮り続けることになった。

写真集として世に送り出したいと思ったのは、この地下アイドルの世界を写真で記録して伝えるべきというシンプルな思いからだ。なぜか、地下アイドルという対象にちゃんと迫った写真家を他に知らない。アイドルが若者文化の中心となってきている時流の中で、これほど今を現す対象に目を向けないというのは、私には不思議でならない。
 同時に、ベルハーというライブアイドルの現場を通して、人間とは何か?という問いへと迫りたかった。被写体は確かにアイドルを写したものだが、この作品はただのアイドル写真とか、ライブ写真とかでラベリングして終わらせることはできない。もっとずっと射程の広いものだ。

写真には生々しくも、愛すべき人間そのものが写っている。それはメンバーたちだけでなく、運営、ファン、あるいは撮っていた私も含めてだ。
この世界を通して見えてくる人間の姿。それは、狂おしいほどの「生」だと思う。この地下の世界で行われている出来事は、まるで「生」へと向かうための祝祭のようだ。それぞれが抱えるどうしようもない日常を生き抜くために、暗闇から光へと手を伸ばすように。祝祭は繰り広げられる。

本書は私にとって3冊目の作品集となるが、写真のセレクト、編集、デザイン、印刷に至るまで完全にやり切ったと言えるほど、納得がいくものに仕上がった。出版状況は完全なる逆風のいま、物として価値がある本を残すことが重要だと考えて、送り出したこの写真集。どうか一度手にとって触れてほしい。(おの・けい=写真家)
≪ウェブサイト:www.silverbooks.net
この記事の中でご紹介した本
暗闇から手をのばせ Reach out and Touch Faith/SilverBooks
暗闇から手をのばせ Reach out and Touch Faith
著 者:小野 啓
出版社:SilverBooks
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