【横尾 忠則】「見たいもの」を「見せない」絵 「冥土旅行」は煉獄の赤鬼|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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2018年3月6日

「見たいもの」を「見せない」絵 「冥土旅行」は煉獄の赤鬼

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2018.2.19
 東京新聞の岩岡さんが新刊の対談集『創造&老年』についてインタビューに。質問を待機していたら、「自由に話して下さい」となった。聞かれないと何も出てこない。フーッと大きい溜め息しか出てこない。この「フーッ」は三年かかって、やっと本になった長旅の「フーッ」である。

昨日寒かったせいか躰が冷えてちぢこまって絵筆に手が伸びない。成城漢方内科クリニックに行く。体温は35・8でぼくの平熱。冷えによく効く「ツムラ麻黄附子細辛湯エキス顆粒」という長ったらしい薬名の漢方薬を処方。先生と会話を交している間に元気になってきた。
アトリエにて磯﨑憲一郎さんと(撮影・徳永明美)

2018.2.20
 瀬戸内さんから「広い海が見える高台に家を建てたので日没と日の出を見に来ない」と誘われて一晩泊りで行く。陽光を浴びてか、瀬戸内さんの顔の皺もなく置物のようにつるんと光っていた。

この間からローマに住む女性の評論家がぼくについての本を書くと言って絵画作品の図像をメールで送って欲しいと、そんなやり取りが続いている。イタリアとアメリカで出版されるが日本でも出したいと。

午後、磯﨑憲一郎さんと「群像」での対談をアトリエで。普段あんまり真面目な話はお互いに避けていたが、今日は文学と美術というテーマで話すことになった。まあ「よくわからん」というのが芸術の究極のテーマだから、「わからん」ことについて「わかろうとしない」話を2時間ばかりする。

2018.2.21
 金子兜太さんの死去の新聞記事に驚く。一昨年10月に『創造&老年』で対談した時はお母様が確か104歳の長寿なので、「私は110歳まではいけそーだ」とおっしゃっていただけに98歳は早過ぎるような気がした。

穂村弘さんの対談集の装幀の依頼に毎日新聞出版の藤江さん来訪。穂村さんは対談相手の大半は視覚系の人達ばかり。

2018.2.22
 福沢一郎さんのご長男一也さんが亡くなられた。一歳年上だった。何度か自宅にお邪魔したこともある。

難聴を主題にした耳のシリーズ第一作に取りかかる。思えばすでに耳をモチーフにした絵を結構沢山描いていることに気づく。

2018.2.23
 神戸へ、妻、徳永同伴。車中過去に何度も読んだ森鴎外の「寒山拾得」を読む。この小説を読むといつも睡魔に襲われる。だから忘れてまた読むのかも知れない。

明日からの「横尾忠則の冥土旅行」展のための記者会見に出席。全身真赤っか(靴も)はパフォーマンスではないが、煉獄の最後の審判のエンマ大王をサポートする赤鬼を連想させるには充分の効果あり。

晩餐会の第一樓の中華はハイ&ローで口に合った。
会場風景(撮影・多胡真佐子)

兵庫県知事・井戸敏三さんと
横尾忠則現代美術館館長・蓑豊さんと
2018.2.24
 昨夜は疲れのせいか夢も見ず、熟睡。朝からのオープニングだけれど東京からの来客もあって盛況。10年振りで会う吉本ばななさんも出席。浅田彰さん、国立国際美術館の安來正博さんは毎回のレギュラーで嬉しい。例によって井戸敏三知事は展覧会にちなんだ歌を披露。浅田さんと吉本さんの今回の新作の高い評価に気分を良くする。
浅田彰さんと
吉本ばななさんと
新作は女のポートレイトだが、顔のど真中にトイレットペーパーや、靴や、キャベツや、本や、猫や、蛙などで眼を隠した。あえて見たいものを見せない。通常、美術では見えないものを見せるという言い方をするが、ぼくの「Y字路」の中で「見えるもの」を「見えないようにする」黒のY字路シリーズを描いたことがあるが、その論理と同様の方法で「見たいもの」を「見せない」という手法を取ることで欲望の否定を表現した。
寂庵にて瀬戸内寂聴さん、横尾泰江と(撮影・徳永明美)


午後、京都の瀬戸内さんの寂庵へ行く。目的は元総理の細川護熙さんが造った陶器の五輪塔を寂庵の庭に設置した墓のデザインを頼まれていたので、その場所の下見とデザインをするためである。

寂庵に行くと決まってでるのがぜんざい。今日のぜんざいはあずきがちょっと煮過ぎた感があった。なんでも貰い物だそーだ。秘書のまなほさんはエッセイ集を出して以来、彼女単独の取材が多く、最近は売っ子になって、今日も東京にテレビか何かで不在だった。

二日留守にしていたので、おでんは、いつもは知らんぷりのくせに、今日は玄関まで走って出迎えにくる。

2018.2.25
ロシアの都市計画に参加して欲しいとある建築家の要請があるが、一体何をするのか聞かされてないのと、海外旅行へは行きたくないので気乗りがしない。

東京マラソンで日本人記録を破ると一億円の賞金が出るそうだが、設楽選手がそれを獲得した。まさか都民の税金じゃないでしょうねえ。

夕方、整体院へ。整体師二人共目を患ったり、ポリープ手術をしたりでどっちが病人だかわからない。
2018年3月2日 新聞掲載(第3229号)
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