第百五十八回  芥川・直木賞贈呈式|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2018年3月2日 / 新聞掲載日:2018年3月2日(第3229号)

第百五十八回  芥川・直木賞贈呈式

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右から石井、若竹、門井氏
2月22日、東京都内で第百五十八回芥川龍之介賞と直木三十五賞の贈呈式が行われ、芥川賞の石井遊佳氏(「百年泥」新潮11月号)と若竹千佐子氏(「おらおらでひとりいぐも」文藝冬号)、直木賞の門井慶喜氏(『銀河鉄道の父』講談社)に賞が贈られた。

芥川賞の川上弘美氏と直木賞の宮部みゆき氏による選考委員代表の挨拶ののち、続く受賞者の挨拶で石井氏は「オーソドックスな小説の定義として小説は人間を描くものというのがありますが、正直申して私は人間を描くことにあまり興味がありません。私が描きたいのは世界です。このへんてこな世界の有り様やからくりを、言葉の持つ可能性を最大限に発揮して描いていきたい。人間というのは無限の過去から未来にかけて続いてく流れのなかのひとしずくとしてあって、しかも瞬間瞬間に生まれては死にを繰り返す。仏教で言うと刹那滅と申しますが、そんな存在です。ですから私たちの心や体と、このマイクや床や天井とは何ら変わるところがない。その中から人間の心だけを取り出して、嬉しいの悲しいのと細かく書いていくことに私はあまり意味を見出せません。ですが巧みに人間が描けている小説を読むのは大好きなので、若竹さんや門井さんの作品はめっちゃ面白かった。小説は人間を描くものだ、いや世界を描くものだと言ったところで、とことん極めた小説、スポンと突き抜けてしまった小説というのは、結局同じ場所、同じ次元に到達しているものではないかと思っております。今回の受賞ではあらゆる人にお礼を申し上げたい気持ちですが、やはりいちばん感謝しなくてはいけないのは両親だと思いますので、この場を借りて両親に御礼の言葉をいいたいと思います」と話して、会場に招待していたご両親に「産んでくれてありがとう」と感謝の言葉を捧げた。
若竹氏は「子供の頃から絶対に本を書く人になるんだと思っておりましたが、とうとう63年経ってしまいました。私は石井さんとは逆に、私の小説は自分に対する好奇心から出発したものです。私は一体どういう人間だろうかというのが本当に分かりたかった。そして分かったことをなんとか面白おかしく表現したいというのが心の底からの欲求でした。この二つでずっと飽きずに小説に向かい合って来られました。これは本当に幸せなことだとつくづく感じております。人生長く生きていればそんなにいいことばかりではありませんが、それでも諦めずにいられたのは、私には小説があるという思いがあったからでした。辛くて悲しいことがあっても、いつか私は小説を書いて、私の思いをみんなに伝えるんだということで乗り越えてこられました。私は今63歳ですが、もっと良い小説を書けると思っています。今や人生100年時代ですから、60なんてまだまだチャンスがあると、もっと高みを目指して頑張ろうと思っています。皆さんどうぞ私を見ていてください」と語った。
銀河鉄道の父(門井 慶喜)講談社
銀河鉄道の父
門井 慶喜
講談社
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門井氏は「今回の作品で私は、宮沢賢治は長男に生まれたにも関わらず跡を継がず、長く続いた仕事もなく、売れるかどうかも分からない原稿を書いて早死したという意味では親不孝者だというようなことを書いたつもりですが、それはある意味では僕自身の人生でもあります。やはり長男でありながら父の会社に入ることもせず、売れるかどうかも分からない原稿を書いていたという点で、まさに僕も宮沢賢治だと思っていました。ところが今日、もう一人そんな作家がいることを知りました。それが直木三十五なんですね。彼も大阪の古着屋の長男に生まれたにも関わらず、早いうちに東京に出て、卒業はしなかったものの早稲田に通い、その後破天荒な人生を送りました。ここにも親不孝者がいたという意味では、僕も伝統の末端にいるということで安心するのですが、一つだけ賢治と直木三十五を見習うまいと思うことがあります。この二人はどちらも早くに亡くなっているんですね。それだけは先人を見習うことなく、一日でも長生きをして少しでも長く頑張っていきたい。今日はその大きな一里塚だと思っております」と話した。
この記事の中でご紹介した本
銀河鉄道の父/講談社
銀河鉄道の父
著 者:門井 慶喜
出版社:講談社
以下のオンライン書店でご購入できます
おらおらでひとりいぐも/河出書房新
おらおらでひとりいぐも
著 者:若竹 千佐子
出版社:河出書房新
以下のオンライン書店でご購入できます
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