連 載 今日のアメリカ映画 ジャン・ドゥーシェ氏に聞く47|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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ジャン・ドゥーシェ氏に聞く「映画/映画作家/映画批評」
更新日:2018年3月13日 / 新聞掲載日:2018年3月9日(第3230号)

連 載 今日のアメリカ映画 ジャン・ドゥーシェ氏に聞く47

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セドリック・アンジェ(右)と
JD 
 『スターウォーズ』のような映画は、一秒たりとも見る気が起きません。馬鹿げたものだとさえ思っています。それでも見てみようと思い、最初の10分だけ我慢して見ました。結局、それ以上は見ていられませんでした。嫌になるほどに作り物にすぎない。本当に良くないのです。
HK 
 『スターウォーズ』という作品の世界観に入り込まなければいけないですからね。『スターウォーズ』は、50年代のB級SFや冒険小説のようなところから着想を得ていたはずです。
JD 
 残念ながら、その通りです。肩入れしすぎてさえいる。ルーカスやスピルバーグのそのようなところには、少し残念に感じるところがあります。
HK 
 スピルバーグも好きではないのですか。ドゥーシェさんの口からスピルバーグの名前を聞くことは、滅多にないですね。
JD 
 スピルバーグは、本当に好きな映画作家だとは言えません。彼と同じ世代では、コッポラとデ・パルマの方がいい。スコセッシですら、コッポラたちとは同等に語れないと思っています。
HK 
 リドリー・スコットはどうですか。
JD 
 悪くない映画作家だと思っています。
HK 
 トニー・スコットの方がいいのでは?
JD 
 確かにトニー・スコットの方がいい作家です。
HK 
 マイケル・マンもいますね。
JD 
 マイケル・マンは、現在のアメリカ映画で、私が肩入れしている作家の一人です。アベル・フェラーラも同じようにして、重要な作家だと考えています。
HK 
 マイケル・マンの最新作『ブラックハット』を、少し前にシネマテークのシネクラブで取り上げていました。この作品こそが、今日の映画を体現しているのではないでしょうか。
JD 
 見事だというしかない作品です。そのような映画を撮ることができるから、マイケル・マンは偉大な作家なのです。
HK 
 この作品ではものすごい速さで、アクションが展開されていきます。うろ覚えですが、はじめの画面は確かハッキングされた中国の核発電所でした。それが突如としてアメリカに舞台が移り、またアジアの何処かへと飛ぶ。全てがあっという間の出来事です。金庫破りのような事件が起きるのも一瞬の出来事であり、瞬時のアクションによって成り立っている。そして、特定の事件に肩入れすることもなく、全編が同じ緊迫感で展開されていく。
JD 
 その通りです。世界は一つの存在となっています。ところで、つい最近シネマテークのシネクラブで紹介した、セドリック・アンジェの『次は、心臓を狙う』はどうでしたか。
HK 
 初めてセドリック・アンジェの作品を見ました。面白い作品でした。しかし、少し混乱するようなところもありました。おそらく、わざとそのような作りにしている。曖昧なところが、初めから終わりまであったはずです。冒頭のシークエンスは見事だと感じました。夜のフランスの田舎町を、女の子がバイクで帰途につく。その後ろに、ふと怪しい車が現れたと思ったら、理由もなく殺意をむき出しに衝突してくる。
JD 
 何を見ているのか、よくわからなかったのではないですか。
HK 
 最初は、ヒッチコックのように、サスペンスが展開されていくのではないかと考えました。しかし、何が起きるのか期待していていたのですが、あまり驚くような展開はない。憲兵が、日常生活のようにして、中途半端な殺人を繰り返していくだけでした。説明的な描写がほとんどなかったり、見せ方の問題だと思いますが、最後まで何を見ているのかよくわかりませんでした。しかし、それが良かった(笑)。
JD 
 確かにそのようなところがあります。
HK 
 正直言うと、よくわからなかったのは、文化的な基礎のせいかとも思います。この殺人を犯していく憲兵が、女の子を殺すたびに自分の背中に鞭を打って、自ら罰する。この自らを罰するという行為は、ドゥーシェさんが言うように、人物の二重性に関わるってくることだと思います。
JD 
 その通り、二重性が問題です。日本でも同じようなことはあるはずです。例えば、日本において、正義感に溢れた非常に優れた警察官がいる。しかしながら、同時に犯罪者でもある。そのような人は混乱するはずです。

<次号へつづく>
〔聞き手・写真=久保宏樹〕
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