第33回坪田譲治文学賞 『キジムナーkids』 現代書館より刊行 |書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2018年3月27日 / 新聞掲載日:2018年3月23日(第3232号)

第33回坪田譲治文学賞
『キジムナーkids』 現代書館より刊行 

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平成30年2月25日(日)、岡山市にある吉備路文学館で第33回坪田譲治文学賞の贈呈式が行われた。

受賞作は上原正三著『キジムナーkids』(現代書館)である。さきごろ芥川賞に岩手県遠野のことばで描かれた作品が選ばれたが、この作品は要所にウチナーグチ(沖縄語)の会話が登場する。地方創生という政府主導の地方復権の政策があり、それを意図した作品ではないかと思いがちであるが、こうした動きとはまったく関係ないものである。が、私たちの心に故郷をいつくしむという気持ちが根強いこともまた事実であろう。作者の上原氏もまた沖縄の出身なのだ。

この作品は回顧的に沖縄戦最中の場面も出てくるが、戦後荒廃の沖縄で暮らす少年たちヤナワランチャー(悪ガキ)5人と、彼らを取り巻く家族、周辺の人たち、米軍兵士ほかが繰り広げる日常生活が中心である。おそらく終戦直後の沖縄の暮らしは想像もできないくらい悲惨であったはずである。そして、住民の心に残した傷もいまだに癒えないほど深い。しかし、この作品は子どもたちの天衣無縫な明るさと、当時、立ちあがっていこうとする沖縄の人々の逞しさと明るさに包まれていて読む人の心を決して締め付けたりはしない。それでも本作の底流には戦争の無意味さと、いまだにアメリカ軍の駐留に苦しむ沖縄の現実を訴えていることは間違いない。

坪田譲治賞は選考の基準に、「大人も子どもも共有できる世界を描いた優れた作品」を選ぶと定められている。戦後を振り返り沖縄を考える時に、親と子や教師と生徒とで読んで考えるには格好のテーマではないだろうか。ご存知の人も多いとは思うが、キジムナーとは沖縄周辺で伝承されてきた伝説の妖精のことである。本文の下段に加えられた沖縄ことばの解説を参考にしながら読み進めると味わいが一層深くなる。
(四六判・360頁・本体1700円)

現代書館TEL:03・3221・1321
この記事の中でご紹介した本
キジムナーkidsキッズ/現代書館
キジムナーkidsキッズ
著 者:上原 正三
出版社:現代書館
以下のオンライン書店でご購入できます
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