穂村弘『シンジケート』(1990) 「耳で飛ぶ象がほんとにいるのならおそろしいよねそいつのうんこ」|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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現代短歌むしめがね
更新日:2018年3月27日 / 新聞掲載日:2018年3月23日(第3232号)

「耳で飛ぶ象がほんとにいるのならおそろしいよねそいつのうんこ」
穂村弘『シンジケート』(1990)

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穂村弘のデビュー作『シンジケート』は、実は「おしっこ・うんこ」のモチーフが多く登場している。バブル期という時代背景の中で、悪ふざけにふけることでもって社会への抵抗を試みようとする若者たちの感覚に寄り添うものとして、そのモチーフが選び取られているからだ。穂村弘の代表歌の一首として数えられているこの歌も、ディズニーアニメのダンボというキャラクターの、アニメの中では決して描かれない排泄行為に言及することで、この世界にあふれている隠蔽をさりげなく衝いてみせている。この歌がカギカッコにくくられているのはしゃべり言葉の引用というかたちで表現されているからで、しかもこれを発話したのはおそらく女性という設定である。純真な感覚でもって世界の偽善を暴く存在という理想像が、女性の姿に託されている。

なおこの歌を引用した新聞記事が雑誌「宝島」のコーナー「VOW」で、短歌史的な革新性などの文脈はガン無視で、ただサブカル的に面白がられて投稿されたというエピソードは何とも示唆的である。しかも穂村弘が有名になる前は、記事の画像だけで勝手に「小学生の作った短歌」としてインターネット掲示板などで流通されてしまっていた時期もあるのだから笑える。「VOW」の投稿者を、短歌のことを知らない単なる無知と片付けることはできない。むしろ「何かが変わろうとしている」という予感を、かなり鋭敏に感じ取っていた人物といえるのかもしれない。(やまだ・わたる=歌人)
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