夜のピクニック 書評|恩田 陸(新潮社)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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【書評キャンパス】大学生がススメる本
更新日:2018年3月24日 / 新聞掲載日:2018年3月23日(第3232号)

恩田 陸著 『夜のピクニック』
大阪樟蔭女子大学 深澤 菜奈美

夜のピクニック
著 者:恩田 陸
出版社:新潮社
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夜のピクニック(恩田 陸)新潮社
夜のピクニック
恩田 陸
新潮社
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「みんなで、夜歩く。たったそれだけのことなのにね。
どうして、それだけのことが、こんなに特別なんだろうね。」(文庫版P.31)



このセリフは、主人公・甲田貴子の友人であり、キーパーソンでもある、榊杏奈のものだ。まさにこの物語を表しているセリフだと思う。

この物語は、北高鍛錬歩行祭という朝8時から翌朝8時まで歩く行事間の若者たちの気持ちを描いたものである。

貴子と西脇融はお互いの親友にも打ち明けることができない複雑な関係にあった。貴子はその関係をどうにかしたいと思い、高校三年生最後の歩行祭で密かな賭けをしていた。その手伝いをすべく、杏奈は去年の歩行祭で、ある“おまじない”をかけていた。ところが、杏奈はアメリカに行ってしまい、貴子たちとは一緒にいないというところが面白い点である。さて、貴子の賭けはどうなるのか。杏奈のおまじないは効くのか。

あくまで主人公は貴子と融であるが、彼らの友人たちも取り巻いた物語となっている。恋については、自分が高校生であった時を思い出し、こそばゆく、時に切ない気持ちにさせられる。また、家族とは、友人とは何かを考えさせられる内容にもなっている。

若いがゆえに起こしてしまうこと、友人の恋について、家族について……。友人と話したり、考え込んだりと、たった2日、時間だけで言うと1日しかたっていないのに大人へと成長していく高校生たち。危うさもあるけれども、若いからこそ成長するときははやいのだ。融ははやく大人になりたいと思っているが、高校生の頃ほどキラキラした時期はない。そのことは、高校を卒業してから気付くのだ。私も融と同じく、高校生だった頃ははやく 卒業したい、大人になりたいと思っていた。母に高校時代ほど良いものはないと言われても、そうは思わなかった。しかし、今はグラウンドで走り回っている高校生を見るとキラキラと眩しく感じられて、羨ましくて仕方がないのだ。この物語を読んでいてもそんな気持ちになってしまう。

融の親友・忍が従兄弟の話をする場面がある。その従兄弟がお薦めの本を持ってくることがあったが、持ってきてくれた時に読まず、最近になってから読んで後悔したという話である。持ってきてくれた時に読んでいたら、自分を作るための大事な本になっていただろうというのだ。私は誰かに薦められた訳ではないが、『夜のピクニック』を読んだ時、忍と同じ気持ちになった。高校生の時に読んでおきたかった、と。

この物語を読んで高校生の頃を懐かしむのもいいけれども、この、まさに青春を表している物語は主人公たちと同じ高校生の頃に読むことで人生が変わるような気がするのだ。高校生に本を薦める機会がきたら、ぜひこの本を薦めたいと考えている。


【関連サイト】
◆大阪樟蔭女子大学受験生応援サイト・国文学科ブログより
「古典文学ゼミ生の書評が「週刊読書人」に掲載されました!」2018.04.02
この記事の中でご紹介した本
夜のピクニック/新潮社
夜のピクニック
著 者:恩田 陸
出版社:新潮社
以下のオンライン書店でご購入できます
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