猫はこうして地球を征服した 人の脳からインターネット、生態系まで 書評|アビゲイル・タッカー(インターシフト)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2018年3月31日 / 新聞掲載日:2018年3月30日(第3233号)

現代のネコブームを考察 
なぜ人間は猫に隷属するのか

猫はこうして地球を征服した 人の脳からインターネット、生態系まで
著 者:アビゲイル・タッカー
出版社:インターシフト
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現代は猫ブームである。猫が世界を征服している、といっても過言ではない。猫の飼育数が増え続け、街中から自然界まで猫が跋扈している。ネット上では猫情報が氾濫し、我々の生活は猫で溢れている。

著者は、『スミソニアン』誌の記者で、気鋭のサイエンスライターだ。生まれてこの方、生活の中に猫がいて、今も猫と共に暮らしている。猫の魔力に取り込まれ「催眠術にかかっている」と自負している。そんな中、自身の子供を持つ。子供へのケアが第一になり、最優先のケアを子供に注ぐようになる。猫に対するケアを省みた時、なぜ自身が猫に隷属してきたのか知りたくなった。その科学的な裏付けを求め、取材と論考を重ねている。

イエネコは、人類の移動とともに生息地域を広げ、人の生活に寄り添い、かけがえのない家族として大事にされてきたこと。反面、畏怖や忌むべき魔性を帯びた存在として憎まれる対象にもなったこと。絶滅に瀕した野生動物を危機に追いやった原因の多くはイエネコであること。ネコ<終宿主>とする単細胞生物トラキソプラズマがイエネコの生息域の拡大と共に世界中に広まり、<中間宿主>であるヒトをはじめとする動物に健康上のダメージを与えていること。デジタルキャッツと呼ばれるネット上の猫が莫大な数に及んでいること。台湾発といわれる<猫カフェ>が世界中に広まったこと。また、著者は品種の改良が始まって歴史が浅い猫のペット業界における現状や、世界中を席捲しているハローキティに口が描かれていないこと等、取材は多岐にわたる。

こうした事実と考察から、ある推察が成り立つ。猫は、「世界を征服する戦略」を抱いているのではないか。様々な戦術を駆使し、猫の生息に有利な環境の創出を企図してきたのではないか。人間は猫の世界征服を助け、下僕として、時には右腕として彼らの野望達成に手を貸している。人の生活に入り込んできた猫に、赤ちゃんに対するように愛情を注ぐべき存在として母性本能を触発され、「人間は自ら進んで」愛情を注ぎ、彼らを庇護すべく多大な手間暇を掛け、お金を掛け、手を差し伸べている。

さて、猫自身は「世界を征服する戦略」を目論んでいるのか。そうではないだろう、ただ目の前のエサと暖かい寝床に執着してきただけだろう。だが、人類は猫の真意を確認できていない以上、そうだとは言い切れない。もしかしたら、猫が世界征服を進めるために世界中の猫を指導監督する<世界猫帝国>が存在し、その本部が発信した<人間洗脳数目標>があり、日々のノルマの達成を世界中の猫に課しているかもしれない。あの神秘的な瞳の奥に、「今日もまた人間を一人、猫の虜にしたにゃあ」とほくそ笑んでいるのだろうか。今日も道端で出会ったネコに、「ねこちゃん、こんにちは」と話しかける人間がいる。私も<世界猫帝国>の熱心な信奉者だ。(西田美緒子訳)
この記事の中でご紹介した本
猫はこうして地球を征服した 人の脳からインターネット、生態系まで/インターシフト
猫はこうして地球を征服した 人の脳からインターネット、生態系まで
著 者:アビゲイル・タッカー
出版社:インターシフト
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