百年泥 書評|石井 遊佳(新潮社)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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書評アイドル 渡辺小春が読む芥川賞
更新日:2018年3月30日

人生とは何が本当に起こるかわからない
第158回芥川賞 石井遊佳著「百年泥」(2017年)

百年泥
著 者:石井 遊佳
出版社:新潮社
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百年泥(石井 遊佳)新潮社
百年泥
石井 遊佳
新潮社
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今回は、一番最近の第158回芥川賞を『おらおらでひとりいぐも』と共に受賞をし、話題となった『百年泥』(初出「新潮」2017年十一月号)。元夫に借金を返済するために、紹介された南インド、チェンナイで日本語教師として働くことになった主人公は、訪れた異国の地で百年に一度の洪水に見舞われる。「しゃべんないね!」とクラスメイトに言われるほど静かだった幼少期から今まで感じていた主人公の人生の記憶が、泥の匂い、景色によって、どんどんと蘇っていく。作者のチェンナイでの実体験と物語の主人公の人生がつまった作品。

まず、この物語の舞台は、インドのタミル・ナードゥ州のチェンナイ市。人口は約464・7万人、IT産業、自動車産業が発達しているインド有数の世界都市である。また、ヒンドゥー教が盛んで1万ものカラフルな彫刻が屋根に施された「カーパーレーシュワラ寺院」や、地元の人もよく遊びに訪れる「マレーナビーチ」は、人気の観光スポット。明るく、楽しそうな都市だ。

作者である石井遊佳さんも現在、チェンナイ市に在住しており、日本語教師をしている。
出身は大阪府。大阪といえば、お笑い。作品からもユーモアを感じられるやり取りがある。蛭にかまれ、いやな思いをした主人公は、「蛭子能収」の名前を見るだけで気が遠くなってしまったり、授業内での生徒との会話では、「マクド」という単語を練習していている場面などは笑いを誘う。         

また、日本語教師という作中と同じ仕事をしている石井さん。外国から来て母国語を日本で教える先生といえば、私の学校でもALTの先生がいる。ALTとは、英語の授業で日本人教師の補助を行う外国人のこと。小学生の頃からずっとALTの先生と一緒に英語の勉強をしてきたが、英語がわかるようになり先生と初めて英語でコミュニケーションをとれるようになったときは、とてもうれしかったのを覚えている。ALTの先生は、海外に行ったことのない私にとって、唯一外国の言葉や文化に触れられる特別な存在だ。そして、プライベートはとても謎に包まれていて、不思議な存在でもある。作中の主人公は、元夫からの紹介を断ることができなくてこの仕事に就いたが、どうして母国ではなく日本で英語を教える仕事に就いたのか、いつも不思議に思っていた。先生に聞いてみようとも思ったが、日本語が通じなく「ヤァ、ヤァ。」としか返事がないので、今回は断念。またの機会に聞いてみることにしよう。

人生とは何が本当に起こるかわからない。まだ海外には行ったことはないけれど、ひょんなことから海外で仕事をすることになったり、そこから生活がガラリと変わることもあるかもしれない。これは、人との出会いからつながっていくものだと物語を通して感じた。これからの人生何が起こるのかとてもわくわくしてきた。


【おまけ】
「インド気分味わってみましたー」
この記事の中でご紹介した本
百年泥/新潮社
百年泥
著 者:石井 遊佳
出版社:新潮社
以下のオンライン書店でご購入できます
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