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ジャン・ドゥーシェ氏に聞く「映画/映画作家/映画批評」
更新日:2018年4月10日 / 新聞掲載日:2018年4月6日(第3234号)

連 載 今日のフランス映画 ジャン・ドゥーシェ氏に聞く51

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エリック・ロメール「エトワール広場」(『パリところどころ』第4話)に出演するドゥーシェ
HK 
 バルベ・シュローデルの映画を見ていて面白いと感じるのは、善人もいなければ悪人もいないということです。登場人物たちが、皆自然に振る舞っています。
JD 
 自然と存在しています。それでいながら、非常にスキャンダルなのです(笑)。
HK 
 バルベの話で思い出したのですが、どうしてドゥーシェさんは『セリーヌとジュリーは船でゆく』に出演したのですか。
JD 
 ロメール、ドゥーシェとリヴェットの間に、色々な問題(リヴェットによる『カイエ』乗っ取り事件など)があったのは、すでに知られていることでしょう。レ・フィルム・デュ・ローザンジュ(ロメールとバルベの制作会社)の最初の頃には、私も一緒になって働いていました。『カイエ』の一件から時間も経ったので、私たちは和解しようと考えたのです。それで、『セリーヌとジュリー』で演じることを引き受けたのです。
HK 
 胡散臭いキャバレーオーナー役を演じていましたね。
JD 
 リヴェットに与えられた役は、好感の持てる役ではありませんでした。いまでは、それほど大した問題ではありません。リヴェットは死んでしまいましたし、過去の話です。
HK 
 グザヴィエ・ボーヴォワについですが、最終的に僕は『ガーディアンズ』を3回劇場で見ました。ドゥーシェさんが、ラッシュの段階から何度も鑑賞していたり、気にかけている作品です。この作品では20世紀初頭のフランスの田舎の生活が再現されていると、何度も電話で語ってくれました。そのような観点から作品を見直したのですが、腑に落ちないところがあります。当時の慣わしよりも、『神々と男たち』のような繰り返しの方が気にかかりました。
JD 
 ボーヴォワの映画をよりよく理解するためには、モーリス・ピアラの映画を見て、十分に理解している必要があります。ボーヴォワは、ピアラの映画の系統にあります。つまり、ある時代における「生」がいかに成りたっているか、どのようにして人間が生きていたのかを見つめる、ということです。ボーヴォワの最新作『ガーディアンズ』を見れば、そのことがよくわかります。スクリーンの前に腰掛け、上映が始まるやいなや、私たちは1915年から1920年のフランスの田舎を目撃することになります。その当時の人々は、『ガーディアンズ』の登場人物たちのように生きていたのです。彼らの生きていた世界のリズムは彼らのものであり、私たちの生きる世界とは異なります。当時の「時間」は今日の世界のようにはできていません。20世紀初頭の時間感覚では、朝があり、昼があり、夜がある、そして翌日が訪れる。日々、同じようにして朝昼夜が繰り返される。一方で今日の世界の時間は、明日、明日、明日である。同じ時間感覚を持っておらず、同様に世界を生きることはできません。
HK 
 同じようにして世界が構成されていないのはわかります。しかし、映画の中で演じている人々は、皆今日の世界を生きている人々なのではないですか。普段の服装や生活によって規定され身についた身体の動かし方が、20世紀初頭の人々とは大きく異なります。過去の世界を再現するというのは、途方もなく難しいことではないでしょうか。
JD 
 問題となっているのは、現代と過去で異なる身体の所作です。時代によって、所作は異なります。ルイ14世の時代を例にとると、ヴェルサイユにおいて誰かと握手をするようなことは滅多にありません。握手という行為は重大な出来事であり、儀式的な出来事でもあったのです。手を握り返すか、握り返さないかで、歴史が動いてしまうこともあり得ました。君主が使用人や臣民に握手を求めることは、考えられないことだったのです。
HK 
 言われた通りだと思います。しかし、この作品で問題だと思うのは、ナタリー・バイが、ナタリー・バイでしかないということです。1910年代の農家には見えません。
JD 
 確かに、その通りです。そこは問題です。

<次号へつづく>
〔聞き手=久保宏樹/写真提供:シネマテーク・ブルゴーニュ〕
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