ラチとらいおん 書評|マレーク・ベロニカ(福音館書店)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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【書評キャンパス】大学生がススメる本
更新日:2018年4月7日 / 新聞掲載日:2018年4月6日(第3234号)

マレーク・ベロニカ文・絵 『ラチとらいおん』
日本女子大学 嶋宮 玲奈

ラチとらいおん
著 者:マレーク・ベロニカ
出版社:福音館書店
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みなさんには悲しい時、泣いてしまった時に手に取る本はありますか? 私には、あります。それが『ラチとらいおん』という絵本です。

このお話には、ラチという弱虫の男の子が出てきます。ラチは本当に怖がりで、暗い部屋に入ることができなかったり、犬が怖かったり、さらにお友達さえ怖がってしまいます。しかし、オレンジのちいさならいおんとの出会いをきっかけにして、彼がだんだんと強く成長していくお話です。

絵本なので、大人はすぐに読み終わってしまうし、大筋だけで捉えてしまえば、よくある話かもしれません。しかし、ゆっくり見ていくと自分だけのキラキラとした発見に出会うことができます。その中で見つけた、とっておきの発見をお話ししたいと思います。

まず、ラチにとってらいおんはどんな存在であるのか考えてみました。らいおんはラチにとって「憧れ」です。しかし、会ったときは見た目が小柄なので、馬鹿にしていました。まるで、好きなアイドルグループのサインはもらえたけれど、肝心の推しメンのサインがないような状況です。ちょっとがっかりしてしまうし、やる気もなくなってしまいますよね。しかし、ラチはらいおんの力を見て、一緒に特訓することを決意します。推しメンではなかったけれど、サインをくれたメンバーの活動を見守っていたら、その子が推しメンになっちゃったような感覚ですね。その後、ラチはらいおんと特訓し、強い男の子に成長するのです。サインきっかけで応援している子が自分の中の最推しになったような状況です。つまり、ラチにとってらいおんは、「何かのきっかけから生まれた、最高のあこがれの対象」という存在だと思いました。私にとっても、そのような存在がいるような気がします。

次に、私はどうして悲しい時や泣いてしまう時、この本を読むのか、考えてみました。すると、この本の中に「勇気の種」を発見したのです。この本に出てくる「らいおん」は勇気の種を主人公ラチにあげています。その場しのぎの薄っぺらな勇気ではなくて、夢まで叶えてしまうくらいの大きな勇気を生み出せる種です。

それと同時に、小さい頃から変わらない、格好つけたがりの自分に会うことができました。「誰かを守りたい。そんな優しさが欲しい。」なんて、格好つけているから大切なものを何回も見逃しました。優しさのふりをして、自分を守るためにごまかすのではなくて、自分が欲しいから、大事にしたいから、そんな風にまっすぐ自分と向き合うための「勇気の種」をらいおんに貰いたくて、いつも読んでしまうのだと思いました。

すぐに泣いてしまったり、八つ当たりしてしまったりする私には、まだ「勇気の種」が根をはっていないのかもしれません。それでも、少しでも頑張ろう、やりたいことに向き合ってみようとする時には、らいおんにもらった種が確かにあるように感じます。「勇気の種」は無条件にがんばったり、我慢したりすることに必要なのではなく、自分を好きになるために必要な種だと思います。ふわふわした不確かな自信で十分なので、まずは種を発見することが大切だと思います。

だから、きっと泣いたっていいのです。最高のあこがれの対象を心に思いながら、ちょっとずつ、つまずいて。勇気の種を見つけて、少しでも成長していくように1日1日を生きて。そして何よりも、大切にしたいものを素直に大切にできる1日になりますように! (徳永康元訳)
この記事の中でご紹介した本
ラチとらいおん/福音館書店
ラチとらいおん
著 者:マレーク・ベロニカ
出版社:福音館書店
以下のオンライン書店でご購入できます
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