対談=樋田 毅×永田浩三 記者人生を掛けた赤報隊取材 樋田毅著『記者襲撃 赤報隊事件30年目の真実』(岩波書店)刊行を機に|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2018年4月13日 / 新聞掲載日:2018年4月13日(第3235号)

対談=樋田 毅×永田浩三
記者人生を掛けた赤報隊取材
樋田毅著『記者襲撃 赤報隊事件30年目の真実』(岩波書店)刊行を機に

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第4回
残すべき事実と検証する材料を提供

永田 浩三氏
永田 
 『記者襲撃』に戻りますが、あわや犯人らしき人物と遭遇するようなスリリングな場面が出てきます。明らかに怪しいと思う人物がおられましたか。
樋田 
 今度こそ解決するぞ、と思ったことは三〇年間のうちには一〇回くらいはありました。でも取材を終えて結果をみると違っていました。現時点では、あれが犯人だとはっきり言えるものはないですね。それぞれ緊張して臨んだけれどうまくいきませんでした。
永田 
 本の中盤以降には宗教団体α教会、その関連政治団体のα連合についてかなり踏み込んで書かれています。これも覚悟が必要だったでしょうね。
樋田 
 最初に申し上げておくと、私はα教会、α連合が事件に直接関わっているとは書いていないし、関わっていると書くために筆を進めたわけではありません。取材する過程で知り得た組織の闇の部分を書き残すべきだと考えて書きました。
永田 
 すごく丁寧に書かれています。
樋田 
 時効成立の際、α教会の公式の否定コメントも取りましたし、当時の複数の幹部に直あたりもしています。それを前提にして、なぜ書いたのかと言えば、α教会と朝日新聞との間に緊張関係があったのは事実です。赤報隊事件が起った当時、α教会がおこなっていた霊感商法について「朝日ジャーナル」などで糾弾キャンペーンを続けていました。阪神支局襲撃から三日後に「αきょうかいのわるくちをいうやつはみなごろしだ」と書かれた脅迫状も届いています。ただα教会を取材していく中でα教会系の日刊新聞のα日報の編集長が襲撃される事件が一九八四年に起こっていて、その事件についての経過はこれまでほとんど書かれていませんでした。宗教的な背景があるにせよ、α日報という報道機関で、自由な言論を目指していた人が暴力によって追放されました。これは書き残すべき事実だと思ったのです。
永田 
 今も丁寧に語られていますが、α教会の取材は非常に慎重にしなければいけなかったと思います。
樋田 
 そうですね。私も最初は猪突猛進な取材をしましたが、目の座った人たちに取り囲まれたこともありました。会話もできない状態で、正面からの取材は難しいと思い、脱会者に話を聞くことにしました。
永田 
 今書けることの精一杯を書かれたのですね。
樋田 
 α教会に関して私の立場から言えば、赤報隊事件が終焉して時効になる二〇〇三年の一年前までの間は徹底的に取材をしました。その時点までの書くべきことは全部書きました。そして彼らの主張もしっかり書きました。でもその後はわかりません。細々と取材はしていますが、α教会は組織も分裂していますし指導者も変わって活動方針も変わっています。それは社会的事情もあるでしょうし内部事情もあるでしょう。現在はどのようになっているかまではこの本では触れていません。とりあえず赤報隊事件との絡みについては、一五年前までの人達の取材はしたけれど、そこから先については今後も難しいと思っています。
永田 
 自由の身になられた立場から朝日新聞社の持っている体質や組織についての課題にも踏み込んで書かれています。これはどのようなお気持ちですか。
樋田 
 私がどうしても書きたい、書かざるを得ないと思っていたことは、α教会の幹部と朝日新聞社の幹部が宴席を設けた件です。当時、ごく少数の取材チームが説明を受けメモも見ました。これは完全オフレコで私もずっと頭の中にしまい込んでいました。機会があるごとに検証して書くべきではないのかと上司に話したことはありましたが、ずっとここまで来ました。「30年目の真実」とタイトルに入れた本を書くにあたって最後のチャンスだと思いました。報道機関としてこんなことがあっていいのか、と私個人としては憤慨しています。でも私個人の感情は横に置いて、報道機関として何があったのかをやはり書かなければいけないと考えました。報道機関が一方的に圧力を受ける。新聞社は圧力をどうしてもかわしたい。それは戦前でも同じで白虹事件をはじめ色々な弾圧を受けてきました。その中で新聞社としてどう対処するのか。でもその対処がとんでもない結果に繋がり、「言論の自由」を自ら削り取ってしまうことになりかねない。圧力に対面した報道機関の経営者や幹部がしてしまいがちなこと、でもしてはいけないことについて、検証する材料を私は提供しなければいけないと思いました。決して個人的な思いで書いたのではないことを理解していただきたいですね。
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この記事の中でご紹介した本
記者襲撃 赤報隊事件30年目の真実/岩波書店
記者襲撃 赤報隊事件30年目の真実
著 者:樋田 毅
出版社:岩波書店
以下のオンライン書店でご購入できます
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