対談=樋田 毅×永田浩三 記者人生を掛けた赤報隊取材 樋田毅著『記者襲撃 赤報隊事件30年目の真実』(岩波書店)刊行を機に|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2018年4月13日 / 新聞掲載日:2018年4月13日(第3235号)

対談=樋田 毅×永田浩三
記者人生を掛けた赤報隊取材
樋田毅著『記者襲撃 赤報隊事件30年目の真実』(岩波書店)刊行を機に

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第6回
ファクトで勝負し知る権利に奉仕する

樋田 毅氏
永田 
 本に描かれている取材は究極の地を這うような取材です。
樋田 
 最後の章には、信頼のおける元取材班の四人にコメントを求めました。それは一字一句そのまま載せています。彼らは私と一緒に右翼、α教会を取材して、朝日新聞の記者であること自体がとんでもない逆風にさらされている取材を体験する中で、こういう時代が今に来ると予測していました。予測していたけれど、いざ二〇一四年以降の「従軍慰安婦」「福島第一原発事故の避難」の報道を巡る朝日新聞バッシングの厳しい時代になってみると、覚悟していた以上でした。これからはもっともっと厳しい時代が来ると予測せざるを得ないですね。後輩たちには大変だけれど頑張ってほしいです。
永田 
 今のこの本を読まれる方たちはメディア攻撃、特に安倍政権の朝日新聞への攻撃が異常だと感じていると思います。総理自身が朝日に対して、謂れなき中傷を国会の場で行い、また自身のSNSで発信する。それが結果的に朝日バッシング、または不埒な暴力的な振る舞いにも繋がり兼ねないことを醸成している。その旗振りをしているのが現総理をはじめ今の政権の枢要な方たちであることは許しがたいです。
樋田 
 「週刊朝日」に載った斎藤美奈子さんの書評でも同趣旨のことが書かれていました。安倍首相の軽い発言が朝日新聞へのテロを醸成することに直結しかねない深刻な問題であると。今の時代、特にインターネットの世界では、昨今の森友問題で政府を追い詰めつつある朝日をそろそろ懲らしめなければいけない、という言説が出ています。
永田 
 新聞ですから一にも二にもファクトで勝負しなければいけません。総理大臣自らがヘイトを生み出す原動力になっている。朝日新聞は謂れなき誹謗中傷を受けても感情的に返すのではなく事実を持って記事として反論していくことは立派だと思います。特に最近の森友学園をめぐる財務省関連の文書の改ざんをめぐるスクープは目覚ましいものがありますね。朝日がリードし、毎日や東京が追いかけ、NHKもようやく抜き返す。権力の暴走をチェックし、人々の知る権利に奉仕するというメディア本来の役割が戻ってきた感じがしますし、メディア同士の健全な競い合いがあることもうれしいことです。
樋田 
 かつての取材チームの仲間たちも事実を持って議論していく、世の中に伝えるべきテーマ、議論すべきテーマをしっかり事実として伝えて、その事実を巡って議論する場も提供していこう、それが大事だと言っています。それしかないのでしょうね。
永田 
 樋田さんは、言論機関を暴力によって黙らせようとしたのは誰か、その犯人に迫るということを三〇年にわたって続けるという、新聞記者として特異な道を結果的に歩んでこられたわけですが、樋田さんとしてはそういう記者人生をどう思われますか。
樋田 
 特異なんでしょうか(笑)。でもたまたまだと思います。取材チームにたまたま入った。その後も仲間たちは変わったけれど、一人は残っていないと事件の継続性が保てないので、その一人になってしまった。そして時効まで取材を続けることになった。時効後に取材班は解散しました。何かあれば集まる体制ではあったけれど、社会部本来の継続的な取材チームは存在していなかった。そうしたら私がやるしかないと思って後半は空いた時間ができれば取材を続けてきましたね。
永田 
 二〇一七年に放送された赤報隊に関するTBSのドキュメンタリー番組を拝見しました。その中で、朝日新聞の新入社員に対して、事件のあった阪神支局の三階で樋田さんが散弾銃を持ちながらお話をされ、その時に胸をつまらせておられた場面が印象に残っています。樋田さんが、中島みゆきの名曲「世情」がお好きなのも番組で初めて知りました。小尻さんの無念が今も蘇りますか。
樋田 
 それはありますね。新入社員達には怖がることはないけれども、しかし朝日新聞に入社したことには覚悟を持ってほしいと言っていました。もしかしたら赤報隊がまたやってくるかもしれない。もしかしたら命を奪われる危険もあるかもしれない。そのことを心の片隅に持って朝日新聞の記者としての生活を始めてほしい。そして赤報隊を追い詰めるために懸命に取材をした記者がたくさんいる会社であることについて誇りを持ってほしいのです。
永田 
 犯人と思われる人物が浮かび上がっては消えていき、三〇年経っていますから亡くなっている可能性もあります。もしくは今も日本社会のどこかにいるかもしれない。この本が出たことで、犯人あるいは周辺の人が読んでリアクションがあるかもしれません。
樋田 
 本の最後にも書きましたが、もしそうなった場合には、言い分をじっくり聞いて彼らの主張を世間にきちんと伝えようと思っています。その約束は守ります。 (おわり)
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この記事の中でご紹介した本
記者襲撃 赤報隊事件30年目の真実/岩波書店
記者襲撃 赤報隊事件30年目の真実
著 者:樋田 毅
出版社:岩波書店
以下のオンライン書店でご購入できます
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