「海程 541」、「浮橋 創刊号」|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
マイページで記事のブックマーク!
ログイン
マイページ登録

トップページ

特集

書評

連載

コラム

ニュース

読書人とは マイページ

同人誌
更新日:2018年4月17日 / 新聞掲載日:2018年4月13日(第3235号)

「海程 541」、「浮橋 創刊号」

このエントリーをはてなブックマークに追加
■「海程 541」


二月二〇日に急性呼吸促迫症候群のため逝去した金子兜太氏の最後の九句「東国抄318」「秀作鑑賞」を掲載。〈陽の柔わら歩ききれない遠い家〉等九句は、一月二十五日の退院から二月六日の再入院までの間に作られたもの。田中亜美の連載「海程ノート(その六) 「詩」に立つ」では、「海程」バックナンバーを読み直す。第6号の金子兜太「巻頭言」〈ぼくたちは、現在の自分を納得させ得る俳句にかけてきた〉〈何よりも現在ただいまの自分の要望に徹底して忠実であることが大切である。そこにあらたな伝統の形成も、真に人間である表現も成就すると自負すべきである〉〈徹底して行うところに燃焼があり、精神のかがやきがある〉〈問題は「現在の自分」であり、中心は「詩」である〉を引く。連載・齊藤しじみ「京武久美の青春俳句 寺山修司と走った十七文字(11)」では、俳句研究誌「牧羊神」を繙く。寺山は第二号の冒頭で、「PAN宣言」と銘打ち、現代俳句を革新することが目的だと高らかに謳いあげている。また第三号では「海程」元同人の原子公平が、京武と寺山の句に批判的な評論を展開しているという興味深い事実も。

月一回発行してきた「海程」は七月号で終刊し、「海原」へ移行する。(一二〇〇円・埼玉県熊谷市上之八八七 金子眞土方)

■「浮橋 創刊号」


短歌、俳句、詩、小説、エッセーが収められている。曹達の「空白」では、生死をさまよう大事故に遭った男が、不安定な生命の、存在や未来を、そっと掬い取ろうとする。肝臓癌で余命いくばくもない男が、逃げ出してもう自分の目で確かめることができない故郷や山河、友人、その後の人生、父の顔を回想するのは山際省「父の故郷」。「生きていてもしょうがないかなあと、このごろ思う」から始まる吉田ヨシア「消えた人」など、日常に潜む生死の境目に取り込まれた感性が、リアルな物語として立ち上っている。創刊号だが、重厚なテーマと確たる筆致。発行人・小坂忠弘は同人誌「海馬」に所属する。誌名の「浮橋」は『源氏物語』の最終巻「夢浮橋」から取り、〈人生の最終章に渉る舟橋であり浮桟橋である〉〈この現世にどれほど確かなものがあろうか〉との思いが込められている。(八〇〇円・芦屋市松浜町五―一五―七一二)
このエントリーをはてなブックマークに追加
同人誌のその他の記事
同人誌をもっと見る >
学問・人文 > 評論・文学研究 > 日本文学研究関連記事
日本文学研究の関連記事をもっと見る >