【横尾 忠則】巨大自画像に霊性宿る? ぼくに宿るは礼性の欠如|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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日常の向こう側ぼくの内側
更新日:2018年4月24日 / 新聞掲載日:2018年4月20日(第3236号)

巨大自画像に霊性宿る? ぼくに宿るは礼性の欠如

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T+Y自画像(撮影・相島大地)
2018.4.9
 ある映画監督がある映画を作ることになって、あることを依頼される。このところそのプロジェクトが公表されるまでは口外を禁じられているので、あることをないことにしなければならない。

「群像」の保坂和志さんの小説に6月27日生まれの「妹」がでてくるが、ぼくの誕生日と同じ。確か小説の「妹」は保坂さんの妹さんで、聞くところによるとぼくと同じネズミの干支で、ここまで一緒というのは珍しい。きっと高島易断によれば二人共同じ運勢ということになるので、こゝ数日間、背中が痛いので妹さんもきっと痛がっておられるのではないだろうか。でもぼくの原因は老化なので、妹さんには失礼ですよね。

アトリエの巨大自画像を見る人は大抵、ギョッとする。巨大なものには霊性が宿るというが、ぼくに宿っているのは礼性の欠如だろう。

2018.4.10
 旅から戻って駅のホームに降りると50代の長男ではなく4~5歳のまだあどけなさの残った子供の英が嬉しそうに笑いながら寄ってきた。ノスタルジーがそのまま現実になった感じの幸福感を味わう。過去からやって来た夢である。

次の夢も400年ほど遡ることになる。拙者は宮本武蔵かも知れない剣豪に変身して、歌舞伎役者のようなオシャレなサムライ、まさか佐々木小次郎ではあるまい。そんな相手を敵に迎え、抜刀を手に一騎打ちの場に挑んで、「ヤッ!」と斬りつける、がその瞬間、横から山姥がしゃしゃり出て、「この勝負、待った!」とぬかす。

磯﨑憲一郎さんがあるメディアの人とある仕事の依頼のために来訪。

愛知県美術館の南雄介館長よりメールで、行方不明になりかけていた作品が堀美術館に所蔵されているという報告を受ける。また南さんが現在務める美術館にもぼくの80年代の作品が所蔵されていることも知った。個人蔵の作品も、いつか流れ流れてどこかの美術館に入ってくれれば嬉しい。

2018.4.11
 昼間は人の出入りが多く、ザワザワしていた。夜は朝日新聞の書評委員会があるが背中が痛むので迷うが、思い切って行く。書きたい本が入手できたので気分は晴れる。

2018.4.12
 昨夜、入手した本の書評を早朝5時に起きて、朝食まで書き上げる。早速、担当編集者の西さんに「最速入稿、ギネスブック級でしょう」とFAXする。

補聴器の調整に青山の東京ヒアリングケアセンターへ。難聴は補聴器と一心同体になるしかない。

夕方、今日の書評、大きいスペースに掲載したいので300字加筆できないか、と。ハイ、ハイ、来るもの拒まず主義ですよ。

2018.4.13
 早朝5時覚醒。ベッドの中で昨日の書評の字数追加原稿を書く。

さらに、もう一冊読んでみたら書けそうなので、これもついでに書く。編集部に3本キープされることになるので、しばらく書評を書かなくて済む。

2018.4.14
 星の形をした気球に乗ってニッコリ笑う瀬戸内さんを描いた「週刊新潮」の表紙の夢を見る。

久し振りに旧山田邸でコーヒーを飲みながら読書。

ぼくの絵の原点は5歳の時に描いた巌流島の決闘の模写で、その後、機会あるたびにこの絵を反復してきた。大リーグでの大谷翔平選手の活躍を武蔵の二刀流と見立てた絵を描き始める。ある時から主題も様式もいっさい手放した。「なんでもあり主義」が、どうも自分の性格というか資質であることに気づいた。そーいえばグラフィックを職業に選んだ20歳から宿命的に「なんでもあり」の仕事についたわけだ。自らの性格にふさわしい職業を選んだのは、考えではなく「そうあるべく本能の因子なのか、それとも運命がそう導いたのか、考えてみれば不思議なものだ。人生そのものが謎であるということをつくづく想う。

2018.4.15
 早朝の雨もあがる。早々とアトリエで「二刀流」と題する大谷選手と武蔵のコラボ作品を描く。いつものスタイルと違うが面白い絵が描けた。

山田洋次さんとぜんざいを食べながら聞いた話。棟方志功さんがある時、武蔵美で講演をした。「私を見て下さい。真正面です。次は左右横を向きます。最後は後姿です」。生徒は「上からは見ていない」と言った。すると棟方さんはペコンとおじぎをして頭を見せた。ハゲていたので生徒はいっせいに、ウワーッと笑った。そこで棟方さんは言った。「これが芸術です」。そしてスタスタ教壇を下りてしまった。まさかピカソのキュビズムを示したわけではあるまい。

夕方、スポーツ治療マッサージへ。2週間近く痛んだ背中がケロッと治った。
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