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八重山暮らし
更新日:2018年4月24日 / 新聞掲載日:2018年4月20日(第3236号)

八重山暮らし(38)

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手ぬぐいは伝統芸能の舞踊でも使われ、踊り手の心情をも表現する。 (撮影=大森一也)
ティーサジィ

「島の布にはウムイ(想い)が込められているの…」

おんなは、たおやかな仕草で布を広げると歌うようにつぶやいた。
「…ティーサジィ」

一枚の手ぬぐいも、島の言葉で呼び交わされる。語尾がわずかに伸びる、やわらかな余韻が心地よい。

板花織による紋柄や絣が丹念に織り込まれた手ぬぐい。それは想いの深さを伝えるもの。いわば祈りの布だ。かつては帆船で旅立つ兄弟に姉妹が手渡した。航海の安全を願い、兄弟の身を守るために。姉妹(女性)に霊力が宿っているという沖縄ならではの信仰の表れだ。時代が下っても思いの丈は失われず、島人は布を愛おしみ大切に扱う。

織り上げたばかりのティーサジィを見つめる。白地に市松模様の花が浮かび、幾筋も連なっている。福木で染めた輝く黄色、ヒルギのやや茶を帯びた赤、深く濃い藍…。次は、どの色糸で花びらを織り出そうか。息を凝らし悩みながらも、時を忘れるほどに愉しい。草木で染めた色糸は、どのように組み合わせても、決して不協和音を立てることがない。誰が織ろうと美しい花となって浮き出るから不思議だ。

うつむいて一本、一本…、すり足で歩むがごとく、ひたすら糸を重ねていく。その訥々とした手仕事は、誰のこころにも硬質な静けさをもたらす。
(やすもと・ちか=文筆業)
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