〈韓国文学のオクリモノ〉作家来日イベント (韓国文学翻訳院/晶文社共催)  『誰でもない』ファン・ジョンウンさんを囲む  一夜かぎりの読書会@神保町・ブックハウスカフェ|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2018年4月27日 / 新聞掲載日:2018年5月4日(第3237号)

〈韓国文学のオクリモノ〉作家来日イベント (韓国文学翻訳院/晶文社共催) 
『誰でもない』ファン・ジョンウンさんを囲む 
一夜かぎりの読書会@神保町・ブックハウスカフェ

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一月に『誰でもない』(晶文社)、三月に『野蛮なアリスさん』(河出書房新社)が邦訳刊行され、韓国で「現在、最も期待される作家」と称される、作家のファン・ジョンウンさんが来日した。
四月三日、ファン・ジョンウンさんを囲む来日イベント、『誰でもない』の読書会が、神保町・ブックハウスカフェで開催された。
本書は、現代の韓国社会でそれぞれの痛みを抱えながら懸命に生きる人々を描いた短編集だが、作品が紹介されて以降、日本でも確実に読者の心を捉えている作家の生の声を聴きたいと、たくさんの人がつめかけた。 (編集部)

第1回
■読むというより体験する、何らかの感覚を受け容れる

ファン・ジョンウンさん
イベントは、前半にファン・ジョンウンさん、斎藤真理子さん、倉本さおりさんによるディスカッション、休憩を挟んで後半は会場からの質問に作家が答える形で進められた。

はじめに、ナビゲーターの倉本さんは、「『誰でもない』はあらすじにするのが難しい作品で、自分の感覚で味わってもらうしかない作品だと思うので、今日はファン・ジョンウンさんに感想をぶつけてほしい」と会場に語りかけ、訳者の斎藤さんに、本書を訳すきっかけとどこに惚れ込んだかについて質問した。それに対して斎藤さんは、「それぞれの短編が雑誌に出たときから読んでいたが、「上流には猛禽類」のタイトルを見たときには驚いた。そのタイトルだけでもすごい作家がいるなと思った。ファンさんの作品は読むというより体験する。読んでいる間に何らかの感覚を自分に受け容れる。そういうタイプの作家ではないかと思っている。特にこの本に限って言うと、翻訳をしながら透明な付箋がたくさん立っているような本だと思った。透明だから最初は気がつかないが、気がつき出すとたくさん立っていてすべてに意味がある」と、作家と作品を紹介。その後も作品の印象について、次のような言葉が交わされた。

「ハンターのような作家で、すごく運動神経の良い小説というか反射神経がものすごい。こういう小説を読んだのは初めて(斎藤)」
「些細な描写がものすごく細かく際立っているがそこにあざとさはなく、不穏な感じだけが逃げ場のない感じで積み上がっていく。最後までそれはわからないのだが、あるときふっと決壊する瞬間があって、その切れ味が素晴らしい(倉本)」
斎藤さんは、この作品には五感を通じて感じるような特別な感じがあるとして、「ファンさんが、『野蛮なアリスさん』の凶暴な母が夢に出てきてその声を聴いて辛かったと書いていたが、実は私も『誰でもない』の翻訳をしているときに夢の中に作品の登場人物が出てきた」と打ち明けた。それに対して倉本さんは、イベント前に交わしたやり取りから、「韓国の小説は個人的な個について書かれているのだけれど、日本の私小説と違ってものすごく公(おおやけ)に繋がる公小説になっているという感覚がある」という斎藤さんの言葉を引き、「社会状況や自分が置かれている背景に従って、登場人物の人生や境遇が読者の中に立ちのぼってくるが、それは同時に作中で個の強さが保障されているからだと思う。一つひとつの個人の輪郭が濃いので、それが斎藤さんの夢にも繋がっているのではないか」と答えた。
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この記事の中でご紹介した本
誰でもない/ 晶文社
誰でもない
著 者:ファン・ジョンウン
出版社: 晶文社
以下のオンライン書店でご購入できます
野蛮なアリスさん/河出書房新社
野蛮なアリスさん
著 者:ファン・ジョンウン
出版社:河出書房新社
以下のオンライン書店でご購入できます
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