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更新日:2018年4月27日 / 新聞掲載日:2018年5月4日(第3237号)

〈韓国文学のオクリモノ〉作家来日イベント (韓国文学翻訳院/晶文社共催) 
『誰でもない』ファン・ジョンウンさんを囲む 
一夜かぎりの読書会@神保町・ブックハウスカフェ

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第4回
■社会の壊れ具合を図る物差し

休憩を挟んだ後半の質疑応答で、「これから書きたいこと」という質問に、ファンさんはこのように答えた。

「私はこの社会の壊れ具合を図る物差しを、あのセウォル号事件の遺族と行方不明者の家族に合わせている。彼らにとって、この世はどういう社会なのかということを常に考えている。これからも油断することは出来ないし、たくさんの人たちがこれからも見守っていかなければいけないことだと思う」

最後の作家による作品の朗読では、ファンさんがこの本の中で一番好きな作品の一番好きな箇所だとして、「ミョンシル」が紹介された。ファンさんは、この作品は二〇一三年の十一月に書いたものだと告げ、 「最後に船に乗って夜の海を眺めるシーンが出てくる。水平線に映る夜の光を眺めながら美しいと思う。それは私が二〇一三年に実際に眼にした光景で、仁川から済州島まで十三時間かけて乗船する道のりだった。今でなければいつ私はこのような夜の長い時間、船に乗るんだろうと思いながら、作家としての好奇心を持って船の隅々を見てまわった。波は穏やかだったが、船はとても揺れていた。窓のない狭い船室で、私は泳げないので、もしこの船が沈んだらどうすればいいんだろうと考えながら……。その船が二〇一四年四月十六日に沈んだセウォル号だった。私はこの事件の前にこの作品を書いたのだが、これはセウォル号の事件に対する私なりの応答だと、今は思っている。社会の中で孤立している遺族たちが市庁広場に入ってきたとき、その広場に集まった何万人もの人々が遺族たちを迎えるために席から立ち上がった。誰かの指示があったわけではない。人々が長い間、席にも着かず拍手を続けたのだが、私にはその音が沈黙のようで、とても大きな「言葉」のようだった。私たちが家族の痛みに共感します、元気を出してください、ごめんなさいと、声にできなくてかける言葉。その人々の後ろ姿を夜の広場で目撃したことがある。その後ろ姿を見て、「ミョンシル」の一番最後の、水平線に浮かぶ光のようだと思った。」

話し終え、「ミョンシル」の最終章のおわりの文章が韓国語で朗読された。会場は水を打ったように静まり、朗読が終わった後もその余韻は長く留まった。

(おわり)


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この記事の中でご紹介した本
誰でもない/ 晶文社
誰でもない
著 者:ファン・ジョンウン
出版社: 晶文社
以下のオンライン書店でご購入できます
野蛮なアリスさん/河出書房新社
野蛮なアリスさん
著 者:ファン・ジョンウン
出版社:河出書房新社
以下のオンライン書店でご購入できます
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