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八重山暮らし
2018年5月1日

八重山暮らし(39)

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苧麻(ナンバンカラムシ)。八重山では生長が早く一年に5、6回収穫する。
(撮影=大森一也)
ウルズンブー


コッカルルルゥー…。

東の空がほのぼのと白むころ、リュウキュウアカショウビンのさえずりに促され目覚める。それは陽春、ウルズンの季節ならではの清しい朝のひととき。長く大きなくちばし、深紅の姿態も目に鮮やか。鈴を震わすような歌声に束の間の春を知る。

ウルズン。そのつややかな響きは、島のささやかな春にしっくりと馴染む。潤いに満ちみちた気候、樹木草花の芽吹きを想起する。
「ウルズンブーは上等。やわらかくって、透けるように白くしていて、昔から好まれているさぁ…」

庭先で背丈ほどに生長したブー(苧麻)を刈り取りながら知人は語る。

しっとりとした南風が素肌にからみつく。時折、白い葉裏を見せながら苧麻が気だるげに揺れている。

額に汗を滲ませた知人は刈り取った苧麻の茎から葉を落とす。そして、軒下の椅子に腰掛けると茎の外皮から繊維を引き出していく。緑の皮に金具をあてがい、小気味よく剥がす。皮の内側から、真っ白な糸がさらさらと現れる。
「夏にこれをつけたら、もう他の服は着られんさぁ。汗をかいてもすぐ乾いて、まるで空気を羽織っているようだって皆が言うから」

天女の衣のような糸束をまぶしげに見つめる…。

山裾にコッカルーの声が、またひとつ聞こえた。
(やすもと・ちか=文筆業)
2018年5月4日 新聞掲載(第3237号)
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