【横尾 忠則】死の祝祭を描く―死を目的に生まれた生だから、うんとポップで楽しく!|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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2018年5月1日

死の祝祭を描く―死を目的に生まれた生だから、うんとポップで楽しく!

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満島真之介さんと(撮影・米山正樹)

2018.4.16
 俳優の満島真之介さん来訪。7、8年前、世田谷美術館の個展に女優のお姉さん満島ひかりさんと行った時、あんまり面白いので笑い過ぎて係の人に追い出されたそうだが、笑ってくれたなんて嬉しいね。かと思うとこの美術館でぼくの作品を見て、「こんな絵を展示するのはケシカラン!」と学芸員が呼ばれて、観客のひとりから諭されたこともあった。

この間から取りかかっている大谷翔平選手の二刀流をテーマにした絵を描いている。子供の時に描いた巌流島の武蔵の絵を何度も反復しているが、大谷選手とからませた武蔵も登場。
糸井重里さんと(撮影・田口智規〔ほぼ日〕)

2018.4.17
 150号のキャンバスいっぱいに巨大なライオンの顔のアップを描く構想をしながら徐々に覚醒。覚醒してからもライオンの鼻の頭にカニを描くと面白いだろうなと夢の続きの絵を発展させている自分。夢も現も関係ない。

糸井重里さんと、今度出る「アホになる修行」(イーストプレス)について話すが、話題はどんどん離れて、ほとんど仕事感覚0地点に達する。この内容は「ほぼ日」に連載される。糸井さんと話していると、自然に自分の考えが整理されて行くのは糸井さんの聞き上手のせいに違いない。

2018.4.18
 ニューヨークのY字路の絵でブルックリン橋が不正確だという夢を見たので、早速、加筆するが、なぜ夢が現実の問題にちょっかいを出すのか、不思議でならない。

南天子画廊から依頼されているコレクターの夫人像を描き上げる。ご主人が奥さんへのプレゼントだそうだ。

死んだ同級生仲間のレクイエム画をすでに4点描いているが、ここ3、4年の間にまた15人近く亡くなっていると、彼等の顔写真が西脇市岡之山美術館から送られてくる。今までの作品はやゝ暗いので、今回の5点目はうんと明るく死の祝祭絵画にしよう。供養なんて発想はいけません。死を目的に生まれてきた生なんだから、うんとポップで楽しくいかなくっちゃ。

2018.4.19
 山田さんが補聴器を装着しないで会話ができると発案。相手がスマホで話すと、イヤホーンで受信できるのでは、と実験してみると、かなりいけることが実証される。このことで不思議な現象が起った。肉声が空気の振動を伝って聴こえるのに対して、イヤホーンから入る音声は宇宙の人工衛星から送信される分、時差があるので二種類の声がダブって聴こえる。そんなわけで長いセンテンスの言葉はやゝ聞きづらい。

2018.4.20
 バザール(露天市場)が開かれている広場の一角で、羊一頭分の骨で出きているという風変りな楽器で、ひとりの女性が演奏しながら「月の砂漠」を美しい歌声で聴かせてくれる。聴き終って、自分でも歌ってみるが、歌詞がわからなくなってとうとう歌うことができなかったという夢。夢でじっくり歌を聴くなんて初めてだ。

谷崎潤一郎の「白昼鬼語」の装幀を依頼される。題名を文字だけでデザインする案ともうひとつは、高速道路から飛び出した荷馬車が、宙吊りになったままで、馬はすでにミイラ化しているという現実に起った事故の写真からヒントを得た装幀も悪くないなと思っている夢。

NHKの一時間のインタビュー番組の依頼。誰かインタビュアーの希望はあるか? と聞かれても誰も浮かばない。

ふと思いついた絵を急遽描き始める。アクリル絵具でデッサンを取るが、結局油絵に変更する。ここしばらく描き続けているせいか、背中が痛む。生活習慣病の一種だろうと自己診断をするが、ぼくの自己診断は病院の先生よりもよく当る。

2018.4.21
 28度の夏日だという。テレビでは熱中症対策を伝えているが、思ったほども暑くない。サラリーマンじゃないのに土日は世間が休日というだけで、休息気分になる。描きかけの絵を前に、あれこれ空想するが決定打がでない。

帰宅途中、事務所の猫に会いにいく習慣があるが、猫の側もそれを期待している。情は禁物と、今日は知らんぷりを装う。

2018.4.22
増田屋で焼肉ロードの店長と共通の友人、土屋嘉男さんを懐かしむ。2人でよく沼津まで釣りに行っていたというぼくの知らない話を聞く。

あまり好きじゃない絵を毛嫌いしないで、その毒を飲み込んで、そして自分なりの美に変換する行為はピカソの剽窃の論理? 彼はベラスケスやマネを毒として感じていたかどうか? でも対象に悪意を感じるけどね。オマージュは毒がなきゃ。

しばらくサボッていた散歩で旧山田邸へ。今まで誰もこなかったのに、この間から急に人が来るようになった。コーヒーを飲みながら小一時間読書のあと喜多見不動堂に参って、野川ビジターセンターへ。公園のベンチでゆずのジュースを。色とりどりの花(パンジーっていうのかな?)がビッシリ。網を持った親子が蝶を追ってやってくる。(よこお・ただのり=美術家)
2018年5月4日 新聞掲載(第3237号)
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