第六十二回 江戸川乱歩賞 贈呈式|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2016年9月30日 / 新聞掲載日:2016年9月30日(第3158号)

第六十二回 江戸川乱歩賞 贈呈式

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QJKJQ(佐藤 究)講談社
QJKJQ
佐藤 究
講談社
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第六十二回江戸川乱歩賞の贈呈式が、九月九日東京丸の内の帝国ホテルで行われた。受賞は、佐藤究『QJKJQ』に決まった。

家族全員が猟奇殺人鬼という衝撃的な冒頭から始まる『QJKJQ』は、有栖川有栖氏の選評によれば「平成のドグラ・マグラ」ともいうべき作品。佐藤氏は「群像」でデビューし、純文学を書き続けてきたが、今回ミステリという新たな分野にチャレンジした。

最初に日本推理作家協会代表理事の今野敏氏が挨拶に立った。「今回はいつにもまして力が入っております。受賞作を選考会で読んだときから背筋が寒くなるような、感動というのか、一種の危機感を覚えました。一作家として、こいつを生かしておいたらやばいぞというような危機感です(笑)。佐藤究さんを私は既に「サトキュウ」と呼んでいます。頑張ってくださいと言いたくないのですが、立場上言わないといけないので言います。今後も頑張ってください(笑)」。

選考委員は有栖川有栖、池井戸潤、今野敏、辻村深月、湊かなえの五氏で、代表して有栖川氏が選考経過を述べた。「簡単に言うと、敵はいなかった。最初からこの作品に最高点をつけた選考委員が過半数いて、とはいえ論議は行われたのですが、最後まで圧勝でした。
佐藤究氏(左から4番目)

モチーフは家族全員が殺人鬼という異色な内容ですが、唐辛子をいっぱいかけました、辛いでしょう、という作品だったら退屈だなと少し心配しました。読み始めればすぐに、知的で読ませる文章だと分かりました。シリアルキラーばかりの家族の中で、当然のように家の中でも殺人が行なわれる。そして主人公の女子高生が、普段暮している家の中で、ある物に気が付きます。そこから世界の裂け目が見えてきて、ミステリから、或いはファンタジーやホラー話になるのではないかと思う過程もありながら、ある地点からミステリらしい終息をします。何処へ向っているのか分からないような経過がスリリングで、刺激的な作品でした。

他の候補作については、多彩な作品が並びましたが、『(仮)ヴィラ・アーク 設計趣旨』は館ミステリで、知的な文章を気持ちよく読みましたが、館の秘密を知る建築家が作中に出ずっぱりで、だったら胸ぐら掴んで秘密を聞けばいい、とやや設計ミスを感じました。『ラリックの天球儀』は復讐ものですが、人物像や顛末のリアリティに疑問が残りました。『キャパの遺言』は写真家のキャパの謎めいた遺言を巡る物語なのですが、その遺言自体架空で、暴かれていく現代史も、読者のハートを打つには弱かった。

佐藤さんは『小説現代』九月号に乱歩賞受賞第一作の短篇を書いていますが、これは頭を棍棒で殴られるような衝撃的な作品です。まぎれもない本物の才能だったということが、長篇の後のこの短篇で実証済みという感じがしています。佐藤さんがこれからどんなとんでもない作品を書いてくださるのか、大いに期待しています」。

佐藤氏は受賞挨拶で、漫画『最果てにサーカス』から、「言葉は神で、我々はその周りで言葉につかえるピエロだ」という言葉を紹介し、「もし文学が神のサーカスでなかったら、我々はこれほどまでに心惹かれはしなかったのではないか」と語った。引き続き赤川次郎氏の乾杯の音頭で、賑やかな宴となった。
この記事の中でご紹介した本
QJKJQ/講談社
QJKJQ
著 者:佐藤 究
出版社:講談社
以下のオンライン書店でご購入できます
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