石造仁王像 書評|髙野 幸司(青娥書房)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 書評
更新日:2018年4月28日 / 新聞掲載日:2018年5月4日(第3237号)

仁王像探査の取材記録 
歴史や背景にまで説き及ぶ

石造仁王像
著 者:髙野 幸司
出版社:青娥書房
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石造仁王像(髙野 幸司)青娥書房
石造仁王像
髙野 幸司
青娥書房
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仁王像といえば、寺門の左右に立ち、忿怒の形相で邪気の侵入を防ぐとされ、口を大きく開けた阿形像と口を閉じた吽形像からなる。通常は木造であることが多いが、なかには石造の仁王像もかなりの数存在するのである。本書は、このような一般にはあまり馴染みのない石造仁王像について、著者が北海道といくつかの県を除いて、北は東北から南は九州まで全国各地を自ら踏破して、計673ヵ所、総計1369体を探査した珠玉の取材記録である。

著者によれば、石造仁王像との出会いの旅を思い立ったきっかけは、今から6年ほど前、東京銀座の大分県事務所で豊後高田市発行の「石造仁王案内図」を入手、そこに紹介された市内70ヵ所総ての仁王像に会いたいと思ったことにあるという。それも車を運転しない著者は、「趣味の自転車(ヒルクライム用)で出かけることにした」のである。昭和24年生まれの現在69歳、老齢とまではいえないが、取材用機材を携えての自転車行は、著者も吐露しているように、「想像以上に体力を消耗する厳しい試練」であった。だからこそ、「石造仁王像との出会いは感動そのものであった」し、「疲れきった体に感動が走ると、それはまさに陶酔の世界だった」のであろう。このように、著者を石造仁王像行脚へと駆り立てたものは、「学問的見地からではなく」、石造仁王像との出会いに「感動を求めて」のものであった。

本書の構成は、先ず序章において、全国1369体の石造仁王像のうち76%にあたる1036体が、大分県国東半島と鹿児島・宮崎・熊本の南九州3県に所在し、なかでも国東半島(306体)と鹿児島県(455体)に濃密に分布するのが特徴であるとしている。次いで、第一章は「石造仁王像の楽しみ方」とあり、石造仁王像の形や表情、服装・持物など、観賞の手引きにあたる部分。第二章は、石造仁王像のなかでも極めて数が少なく、特に銘文や記録によって、あるいは作風判定の結果、中世以前の制作とみられる作品について、一点一点取り上げながら説明している。最も多くの頁数を割く第三章は、江戸時代から近代(第二次大戦以前)にいたる約340年間に制作された全国の石造仁王像を、著者が同仁王像探訪の原点となった国東半島を皮切りに、分布密度の高い南九州から北九州、中国・四国、近畿・中部・北陸、静岡・信越、南・北関東、東北へと訪ね歩いた取材記録となっている。

注目されるのは、これが単なる仁王像探訪の記録ではなく、その所在(寺院・神社)のいわれや信仰、地域との関わり、そして制作者である石工の系譜など、歴史や背景にまで説き及んでいることである。巻末には、「資料編」として「全国石造仁王像明細・所在地」などの一覧表が添えられ、これから石造仁王像を探訪しようという人にとっては、便利な案内・手引書ともなっている。
この記事の中でご紹介した本
石造仁王像/青娥書房
石造仁王像
著 者:髙野 幸司
出版社:青娥書房
以下のオンライン書店でご購入できます
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