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八重山暮らし
更新日:2018年5月15日 / 新聞掲載日:2018年5月11日(第3238号)

八重山暮らし(40)

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三艘のサバニの舳先が並ぶ接戦。石垣島のハーリーにて。

(撮影=大森一也)

ハーリー   


五月になると、ハーリー鉦がただ待ち遠しい。ガンガン、ガンガラ、激しく鳴り響く豪快な音。鬱陶しい雨雲を蹴散らすかのよう…。こころが晴れやかに浮き立つ。
「この日のために舟漕ぎの練習続きさぁ。隣の組のやつとは口もきかないほど、みんな、ピリピリしているからよぉ」

カラスのように日に焼けた漁師が、港に群れる人びとを睨めまわす。ずしりとした金棒を思わせる二の腕が汗でぬらり輝いている。

沖縄本島糸満の漁民から伝えられたとされる八重山のハーリー(爬龍船競漕)。豊漁と航海安全を祈願する舟漕ぎ儀礼の行事だ。旧暦の五月四日に行われる。このウミンチュ(海人)による祭典は、石垣、西表、小浜、与那国の各島々の漁港で同日に開催される。
「ハーリー鉦が鳴ると梅雨が明けるさぁ」。島人は空を見上げ、お定まりの挨拶を交わす。

極彩色に化粧されたサバニが港に並ぶ。各組の精鋭をかき集めた舟子が細長いエーク(櫂)を握りしめ、沖を見つめている…。

漕ぐ、漕ぐ。己のちからをたのみ、ひたすら漕ぐ。舟とひとつとなって。それだけのことなのに魂が熱くなる。海に飛び込み、甲高い声援を送る少年。太鼓を叩き、叫ぶおんなたち。指笛を吹き鳴らし、踊る人びと。勝利をもたらすのは、どの組のサバニか? 嗚呼、この瞬間のために、海人はきっと生きている。

(やすもと・ちか=文筆業)
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