生き物はどのように土にかえるのか 生き物の「死」からはじまる、新しい命の物語! 書評|大園 享司(ベレ出版)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
マイページで記事のブックマーク!
ログイン
マイページ登録

トップページ

特集

書評

連載

コラム

ニュース

読書人とは マイページ

  1. 読書人トップ
  2. 書評
  3. 読書人紙面掲載 書評
  4. 自然科学
  5. 生き物はどのように土にかえるのか 生き物の「死」からはじまる、新しい命の物語! 書評|大園 享司(ベレ出版)
読書人紙面掲載 書評
更新日:2018年5月12日 / 新聞掲載日:2018年5月11日(第3238号)

新しい死生観が生まれる 
ヒトの死も動植物の死も自然循環の一部

生き物はどのように土にかえるのか 生き物の「死」からはじまる、新しい命の物語!
著 者:大園 享司
出版社:ベレ出版
このエントリーをはてなブックマークに追加
生きているものは、動物も植物も必ずいつかは死ぬ。生命だけではない。太陽の寿命もあと50億年。最後にガスを吹き飛ばして白色矮星という小さくて高密度の星になる頃には地球も消滅している。そして、星の人生最期の大爆発で吹き飛んだガスは、再び集まって新しい星が誕生する。宇宙はこれを繰り返している。

このような壮大な宇宙のドラマと同じようなことが、実は身近なところでも行われていた。それが、この本のテーマである分解の生物学だ。著者は生態学者で、生き物が死を迎えた後、どのように分解されて土にかえるのかということを研究している。我々は、生き物が死を迎えた後の姿をあまり知らない。ヒトは(日本では)火葬の後に埋葬される。猫やカラスも、死体を見せないような場所で死ぬ。

死体の時間経過による変化については、ある意味タブーでもあるだろう。しかし本書を読めば、死は悲しいことでも忌み嫌うことでもなく、次のフェーズの始まりであると知ることができる。

本書は、3つの章から構成されている。1章は動物の死後の分解、2章は植物の死後の分解、3章は生体の分解をめぐるさまざまな話題が紹介されている。

1章の冒頭に、英オックスフォード大学の研究者が調べた、ゾウの死体の分解の過程が詳しく紹介されている。

死体の分解は3つの段階に分かれる。第一段階は最初の4日間で、細胞が分解し、微生物によって腐敗が始まることで体内にガスが発生し膨満する。それに続く第2段階では、ガスの圧力によって体に裂けめができ腐敗液が流れ出る。これが死後24日頃まで。3段階目は乾燥の段階で、残った部分がさまざまな生物に食べられ、最後は骨が残る。

面白いのは死体が分解されるとき、フェーズごとに異なる生物がたずさわることだ。死体を分解する動物を腐肉動物といい、ハイエナなどの哺乳類・ハゲタカなどの鳥類、そして、ハエなどの昆虫がいる。中でも昆虫は、死体の分解のどの段階でどの昆虫が現れるかが決まっている。第1段階では、クロバエ、イエバエ、シデムシなど、第2段階ではケシキスイなど、第3段階ではカツオブシムシなどが現れる。

なので、死体についている昆虫から死後の経過時間がわかる。これを法医昆虫学といい、犯罪捜査で使われているそうだ。

植物の遺体(落ち葉や枯れ木)も同様で、最初はミミズなどの小動物によって分解されたあと、キノコやカビなどの菌類によって分解され土に還っていく。

遺体の分解というテーマは、ややとっつきにくいテーマかもしれないが、『「分解」とは、その文字から受ける印象とは異なって、本来は、新たないのちを作り出すいとなみ』(本書200ページ)だと理解すると、俄然面白くなる。

ヒトの「死」も動植物の「死」も自然の循環の一部だと知ると、スケールの大きな新しい死生観が生まれてくるだろう。宇宙も生物も同じ生成流転する物質の一つの姿なのだ。
この記事の中でご紹介した本
生き物はどのように土にかえるのか	 生き物の「死」からはじまる、新しい命の物語!/ベレ出版
生き物はどのように土にかえるのか 生き物の「死」からはじまる、新しい命の物語!
著 者:大園 享司
出版社:ベレ出版
以下のオンライン書店でご購入できます
このエントリーをはてなブックマークに追加
白鳥 敬 氏の関連記事
読書人紙面掲載 書評のその他の記事
読書人紙面掲載 書評をもっと見る >
自然科学関連記事
自然科学の関連記事をもっと見る >